「鑑賞」カテゴリーアーカイブ

出光美術館で「无」に出逢う

秀吉の消息(手紙)をみてきたというお話の中で、五島美術館では古筆の展覧会が今秋10月に開かれる予定だとお伝えしました。

しかし、10月とは遠い……。

――うーむ、もっと早く、どこかで古筆の実物をみられないものだろうか?

と、少しくネットで調べていましたら、なんと東京でいま開催中の展覧会にかなりの数の古筆切が出品されていることがわかりました。

こちらです。

201602出光美術館「書の流儀」展

千代田区の出光美術館で開催中のこの展覧会に、高野切第一種や継色紙、伊予切などなどなどなど……が出品されているのです。

――え!2月14日(日)までだって。早く行かないと!

ちょうど2月6日(土)は午前中に谷先生の池袋教室があります。教室のあと、ついに初めて、古筆の実物に逢いにゆくことに♪

◇◇◇

201602出光美術館1

池袋から東京メトロ有楽町線で一本、20分ほどで最寄りの有楽町駅に到着です。案内板に「出光美術館  D1出口」とあります。D1から地上に出てみると……、

201602出光美術館2

目と鼻の先に出光美術館の看板が。近~い(^^)/ (JR有楽町駅からだと歩いて5分ほどかかります。) 向こうにちょっと見えているのは皇居のお堀です。

いろいろな書の「流儀」について知り、鑑賞する力を養う――というのが主なテーマのようで、古筆中心の展覧会ではありませんが、出品目録によると30種もの古筆がみられるというのですから、まさに至福のひとときとなりましょう♪

少し前から変体仮名の読みの勉強を始めているので、一つ一つの古筆の前でけっこうな時間を費やして、読みに挑戦してまいりました。ま、「読めるところもそこそこあった」という程度で終わりましたが(^_^;

土曜日とあって見学者は多く、盛況です。

その中に、私と同じようなペースでじっくりじっくり古筆を鑑賞されている、三十代ほどに見える女性がいました。古筆の前に立ち、指で丁寧に丁寧に、線を追っています。かな書道をされている方とお見受けします。

――(うは~、素敵すぎ!)

そのあとは、私もマネして指を動かしてきました(^o^)

◇◇◇

勉強中の『高野切第三種』は残念ながらみられませんでしたが、『高野切第一種』の一部に逢ってくることができました。

201602出光美術館「高野切第一種」

『高野切第一種』(「書の流儀」展・図録より)

実物の高野切との初めての対面!いや~、嬉しすぎてちょっと涙腺が緩んでしまったほどです。千年前の能筆の本物の筆の跡なのです――感動の波が胸に押し寄せてきます(涙)。

――(高野切さま、こつこつ最後まで読ませていただきます!)

指で線を追いながら、じっくりじっくり、読んでいきました。おお!ちょっと勉強していることもあって、高野切系は比較的にやはり読みやすい。そんなにひっかかず読み進めることができました。読めはしても意味まですぐにわかるわけではありませんが(^_^;

そうして三分の二ほど進んだところで――、

「おおっ?この字は……!」

201602出光美術館「高野切第一種」1

そうです、先日「古筆をまなぶ 967 ひかりなき」で初めて学んだ変体仮名「无(mo)」とここでも出逢ってしまったのでした。

『高野切第三種』に出てきた例を再掲します。2字目の字が、「无」を字母とした、ほとんど『第三種』に特有の形だとお伝えした変体仮名です。

201602も1

ひて(おもひて)

201602も2

ひも(おもひも)

少しつぶれた「り」?のようにも見えるこの変体仮名、『第三種』のほかに『第一種』にも登場することを、ここで知ることができました。

◇◇◇

実はですね、この前夜、『粘葉本和漢朗詠集』で読みの勉強をしていたら、そちらにもこの形の「无」が出てくることを知ったところだったのです。

201602粘葉本和漢朗詠集の无(mo)

『粘葉本和漢朗詠集』にも『第三種』の「无」と近い形が出てくる。

『粘葉本和漢朗詠集』は『高野切第三種』と同筆であろうといわれているので、こちらにこの「无」が出てきても不思議はないのですが、『第三種』にほとんど特有の形なんだなと思っていたものですから、ちょっと発見!した気分でいたところだったのです。

◇◇◇

ここまで、私が実例をみてきた中では三種類の古筆切に出てくるだけの、この特殊形の「无」(mo)――もうお気づきでしょうが、すべての用例が、ひとつの動詞に集中しております。

ここまでに挙げた用例を並べてみます。

おもひ  おもひて  おもひも  おもへと(おもへど) おもはぬ

そう、動詞「思ふ(おもう)」や動名詞「思ひ(おもい)」に限って、この特殊な形の「无」が使われております。

というわけで――、

「り」を押しつぶしたようなこの「」(mo)は、『高野切第三種』『第一種』『粘葉本和漢朗詠集』などで動詞「思ふ」及びその動名詞形にのみ使われている

ようだ、と現時点では考えておくことにします。

今後、別の用例が見つかるかもしれません。見つけた場合はすぐにこのブログでご報告します(^^)

◇◇◇

秋まで待たずともどこかで古筆がみられないか、ちょっと調べてみて本当によかった!ヾ(*^。^*)ノ

出光美術館さん、ありがとうございました!<(_ _)>

みずの古筆

それではまた~(^^)/

五島美術館で秀吉の消息をみる

「検定のあとで五島美術館に行くんだけど、一緒にどう?」

硬筆書写検定を一緒に受験した友人にこう誘われておりました。

世田谷は上野毛(かみのげ)の五島美術館で「茶道具取り合わせ展」が開催されているから検定のあとで観にいくというのであります。今回3級を受けた友人もその友人もペン習字歴は半年ほどですが、茶道歴は二十年以上という人たちなのです。

五島美術館といえば古筆の所蔵でも有名な美術館です。所蔵していても観られるのは古筆の展覧会のときだけでしょうが、近くまできたついでにいちど行ってみようかと、ついていくことにしました。

201601五島美術館1上野毛駅

検定試験会場の最寄り駅から一本、20分ほどで上野毛駅に到着。

201601五島美術館2住宅街

駅を出て目の前の環状八号線を渡り、多摩川に向かう下り坂をちょっと下って右に入ると、閑静な住宅街が広がっています。突き当たりに五島美術館の一部が見えています。駅から5分ほどの近さです。

201601五島美術館3

201601五島美術館4

到着。静かだ。ひとけがない……。

入ってみるとけっこう見学者がいましたが(^^)

友人とその友人は、展示されている茶道具の前で長々と、門外漢の私にはチンプンカンプンな会話を続けております。ちと退屈(^_^;

茶道具はほとんど流し見るだけで通り過ぎた私でしたが、ある展示ではたと足が止まりました。

豊臣秀吉消息 おね宛(桃山時代・16世紀)

「消息」というのは手紙のことです。「手紙」はどうもかなり新しい言葉のようで、歴史的には「消息」とか「ふみ(文)」といわれてきたようですね。

ちなみに「消息」というと和文体の手紙をさし、漢文体の書簡は「尺牘 ( せきとく) 」とよぶそうです。

 

館内は撮影禁止なのでお見せできませんが、以前にご紹介したEテレの「「趣味どきっ! 女と男の素顔の書―石川九楊の臨書入門」でやはり秀吉の消息が紹介されていました。

2015NHK臨書入門

番組で紹介された秀吉の消息はこれなのですが――、

2016011秀吉消息おね宛

この中の

2016011秀吉「かへすかへす久しく」

ゝゝ久しく」(かへすかへす久しく)

この「可へ春ゝゝ」の文言は展示品にもありました。ただ、この文言は秀吉の他の消息にも出てくるようなので、同じものだったかどうか、はっきりしません(^_^;

写真の消息は秀吉が正室のおねに小田原攻めの戦況を伝えながら、なかなか手紙を書いてくれないおねに「返事をくだされ」とお願いしているという内容であります。秀吉はたいへん筆まめな人だったそうですが、おねさんは筆不精だったんでしょうか(笑)。

◇◇◇

茶道具の方はみてもその価値がわかりませんでしたが、こうして歴史上の人物の直筆をみられたのは収穫でした。気取りのない自由奔放な筆跡をみて親近感がわきました(^^)

ほかに、秀吉に切腹させられた千利休の、やはりおねに宛てた消息などもみてきました。武将の秀吉よりも太くて力強い線質だったのが少し意外でした。

歴史上の人物も、その筆跡をみてみると人物像により近づけそうな気がします。

◇◇◇

五島美術館の年間スケジュールを見ると、古筆の展覧会は今秋10月下旬から開かれるようです。おお!楽しみだ!絶対に行かねばっ!

それではまた~(^^)/

荘厳!金泥の般若心経

きょうは池袋教室の先輩の作品をご紹介します。

ご自分でも書道塾を開かれているGさん――爺さんではなく、三十代の女性です(^_^)――の作品、金泥で書かれた般若心経です。

美しい……眼福でございます(溜息)。

201509Gさん般若心経1

小筆で書かれているのですが、Gさんは以前に筆ペン「ぺんてる中字」で写経されたものも見せてくださっています。とても繊細な線をみて「極細」で書かれたものと思ったら、中字で書かれたというので驚きました。

中字は私も使っているのでわかるのですが、筆先の微妙なコントロールができないとこれだけきれいに細字は書けません。まさに、腕の違いますね。

また、筆ペンだと1時間ほどで書き上げてしまわれるとか。これだけのものを、いちいちお手本とにらめっこではその時間では書き切れませんよね?…と伺ってみると、やはり個々の字をそらで書けるくらいになっていないとむずかしいそうです。修業の賜物ですね。

201509Gさん般若心経2

まさに荘厳……。

私もお寺で写経をしたことが二度ほどあるのですが、書道の作品の題材としては今までほとんど考えてきませんでした。しかしこういう作品を拝見すると、小筆や筆ペンでしっかりとした楷書を書くという、実用書道の表現の一つとして大いに興味がわいてきます。

書道はいろいろな学び方、楽しみ方がありますね。こりゃ長生きせんといかんなあ(´v`)

それではまた(^^)/