「古筆」カテゴリーアーカイブ

古筆をまなぶ 4 高野切第三種 966 つくはねの(1)詞書

順番では942ですが、『書蒼』1月号の臨書課題になっている966を先にみておくことにします。

966には詞書(ことばがき)――作歌の経緯・事情などを述べた文――が添えられています。この部分は臨書課題にはなっていませんが、読みの勉強をしておきたいと思います。

高野切201512-1自習966-1

左:お手本  右:形臨

(画像をクリックすると大きく表示されます)

読めないところをチェックして勉強を始めましょう。

◇◇◇

 高野切201512-1自習966-1-1

 「みこの(?)や能」

さっそく未習の変体仮名が出てきました。字母は「美」で読みは「mi」です。かな字典をみてみましょう。

高野切201512-1かな字典「美(み)」

『かな字典』二玄社

ひらがな「み」も字母は「美」ですが、こちらの方が字母のイメージをより強く残していますね。

というわけでここは――、

「みこの」(みこのみやの)

では次へ。

高野切201512-1自習966-1-2

「多ち(?)きに」

読みは「ha(wa)」、字母は「者」です。

高野切201512-1かな字典「者(は)」

「ha(wa)」と読む仮名それぞれの、『高野切第三種』での出現回数をみてみます(『変体仮名実用字典(高野切第三種)』より)。

「は」 95回

「者」 38回

「盤」 6回

「八」 1回

「は」の次によく使われています。

――「者」を「ha(wa)」と読むのはどうして?

漢文訓読で「者」をそう読ませる場合があります。たとえば――、

 仁天下之表也(仁天下の表なり)

  仁とは世の規範である

「者」の字を字母として「ha(wa)」と読む仮名が作られたのは、ここからきているのでしょう。

きに」(たちはきに

高野切201512-1自習966-1-3高野切201512-1自習966-1-4

「はへりけるを」

ここは変体仮名はありませんが、「へ」にちょっとひっかかるかもしれません。私たちが普通に手書きする「へ」とは微妙に形が違います。

高野切201512-1かな字典「部(へ)」

「部」の「阝」(おおざと)から生まれた「へ」。古筆ではこのような形であらわれることが多いようです。ときに「つ」のように見えることがありますが、それについては後述します。

はへりけるを

高野切201512-1自習966-1-5

すべて既習です。

みや徒可」 (みやつかへ

高野切201512-1自習966-1-6-1

これも勉強した字ばかりです。

徒可うまつらとて」(つかうまつらすとて

高野切201512-1自習966-1-7

「と介てはへりけると(?)尓」

終わりから二字目が新出です。「よ」のように見えますが、「支」が字母で読みは「ki」です。

高野切201512-1かな字典「支(き)」

「よ」とどう違うか、比較してみましょう。

高野切201512-1かな字典「よ」

高野切201512-1かな字典「き(支)とよ)」

左:支(き)  右:よ

上部の形が明らかに違いますね。

「支」(き)の方は、始筆がクルリと左まわりに宙返りしてからタテに下りていきます。「よ」(字母は「与})は、ヨコ線のあと、いちど筆が離れてからタテ線が書かれます。この始筆の部分に注目すれば区別はつきますね。

ちなみに――

高野切201512-1かな字典 蓬莱切その他の「き(支)」

『蓬莱切(ほうらいぎれ)』その他では「クルリと左に宙返り」がなく、ヨコ線を書いてから、それに交差するようにタテ線が書かれているものがありますが、「与」を字母とする「よ」は最初のヨコ線がタテ線と交差しないので、これも区別がつくでしょう。 

さて、もうひとつ、ここでも「へ」が出てきますが――、

高野切201512-1自習966-1-7-2

この「へ」は「つ」と判別がつきにくいかもしれません。下の字に向かう連綿線の最初の部分まで含めて文字として見ると、「つ」のようにも見えてきます。

このように連綿の具合によっては、「へ」か「つ」か判読しにくい場合がほかにもあるかもしれません。

こういうときは日本語の知識を動員し、「どちらで読めば言葉として成り立つか/文脈に合う言葉になるか」検討していくことになるでしょう。ここでは古文の基礎単語「はへり(はべり)」(お仕えする)を思い浮かべられれば「へ」と読めますね。

てはへりけると支尓」(とけてはへりけるときに

高野切201512-1自習966-1-8

最後です。未習の字はありません。「き」と「よ」の連綿の仕方が面白いですね。

みやちのきよ」(みやちのきよき

◇◇◇

では、通読してみましょう。

高野切201512-1自習966-1詞書

みこの能多きにはへり

けるをみや徒可徒可うまつら

てとてはへりけると支尓

みやちのきよ

変体仮名を今の仮名に置き換え、言葉の切れ目がわかりやすいように分かち書きをしてみます。

みこのみやの たちはきにはへりけるを

みやつかへ つかうまつらすと

とけてはへりける ときに

みやちのきよき

現代仮名遣いにし、必要に応じて濁点をつけます。

みこのみやの たちわきにはべりけるを

みやづかえ つこうまつらずと

とけてはべりける ときに

みやじのきよき

漢字仮名交じりにします。

親王の宮の 帯刀にはべりけるを

宮仕え つこうまつらずと

解けてはべりける時に

宮道潔興

(語釈)

みこのみや  東宮(とうぐう)すなわち皇太子の住まう宮殿。または皇太子その人。

「東宮」 皇居の東側に皇太子の宮殿が置かれたので、こう呼ばれます。今も赤坂の御用地内の「東宮御所」には、皇太子殿下、同妃殿下、愛子内親王殿下がお住まいです。

東宮御所

東宮御所

たちはき(たちわき) 帯刀して東宮を警護した武官

はべり  お仕えする

――という意味の動詞ですが、「あり」の丁寧語としても使われます。また補助動詞として動詞や助動詞を丁寧な形に変える働きがあります。「~ております」「~でございます」などと訳されます。

たちはきにはべりけるを 東宮警護の武官でおりましたのを

つかうまつらず 「つかうまつる」(お仕え申し上げる)の否定形。

つかうまつる 「つかへまつる」(お仕え申し上げる)からの変化。補助動詞として使われると謙譲の意を表す。

 「お送りつかうまつらむ」(お送りいたしましょう)

――「つかまつる」の元の形だと聞けば、ああなるほど!とスッと入ってきますね(^_^)

とけて 解任されて

(意味)

東宮警護の武官でおりましたのを

宮仕えいたさずと(もよいと)して

 → (12/12訂正)宮仕えをしっかりしない(出仕怠慢である)として

解任されましたときに(詠んだ歌)

宮道潔興

◇◇◇

これで、読めて意味もわかりましたね。もういちど読んで、千年前の歌の詞書が読める自分をほめましょう(^_^)

高野切201512-1自習966-1詞書

◇◇◇

帝(みかど)や皇族がたの近くに控えて護衛や雑役などに携わる役人を舎人(とねり)といいました。その中で特に武芸に秀でた人が帯刀を許され、帯刀(たちわき=東宮警護官に抜擢されたそうです。

作者はそういうすごい方だったんですね。しかしお気の毒なことに解任されてしまったようです。次回、その傷心、失意の底で詠まれた歌966をよんでみます。

みずの古筆

今回は長かったですね。大変お疲れ様でした。

それではまた~(^^)/

古筆をまなぶ 3 高野切第三種 941 よのなかの

古今和歌集、歌番号941を勉強します。

高野切201511-3自習941-1左:お手本  右:形臨

ではいつものように、お手本を通読して読めない字をチェックしてから――

はじまりはじまり~(^_^)

◇◇◇

高野切201511-3自習941-1よのなかの

ここは新出の変体仮名はありません。前回と前々回、最後まで読んでくださった方には簡単だと思います。

「よ(1)な(2)の」

(1)は前回も出てきた「能」を字母とする「の」です。

変体仮名007能前回(歌番号965)の「能」

(2)も前回、出てきています。「可」ですね。前回はこんな形で出てきました。

高野切201511-3自習941 よのなかの「か」

以下は次回以降に勉強する予定の942の一部ですが、参考までにご覧ください。

高野切201511-3自習941 参考よのなかは「可」が二回、出てきます。上の方はテンがきちんと書かれているので判読しやすいですね。

対して、下の方はテンが連綿線と一体化しています。このパターンでは、「可」の下部のクルッと右回りに書く部分だけが独立した一字のように見えることがあります。

これが時に「の」のように見えたりするのですが、古筆では「の」は(上の写真の二文字目のように)大きく書かれるのが普通です。「の」は大きく「可」は小さい――と覚えておけば混同することはなかろうと思います。

◇◇◇

ちなみに――『変体がな実用字典(高野切第三種)』(川村滋子・著)という本をみると、『高野切第三種』でどんな仮名がどのくらいの頻度で使われているかがわかります。

この本によれば、「ka」と読む字の登場頻度はこんなふうになっています。

「か」――11回

「可」――131回

「閑」――2回

「賀」――1回

実に90%以上、「可」で書かれていることがわかります。

確かに、この四字の中では、点を打ってクルッと小さく筆をまわすだけの「可」がいちばん速く楽に書けて使い勝手がいいですよね。明治政府はなぜ、この大人気の「可」を採用しなかったんでしょうね?

説明が長くなりました。

これで初句はもう読めますね。

高野切201511-3自習941-1よのなかの

「よの」(よのなかの)

( ̄ー ̄)ゞ きょうのブログタイトルでわかってたけどね。

――それは言わないの(笑)

◇◇◇

高野切201511-3自習941-2うきもつらきも

「うき(1)(2)らきも」

これも、すでに学習した変体仮名ばかりです。

(1)は「毛」(も)、(2)は「徒」(つ)でした。

「うき毛徒らきも」(うきもつらきも)

◇◇◇

高野切201511-3自習941-3つけなくに

「つけ(1)くに」

これも学習済み。「那」(な)ですね。

「く」は字母「久」のイメージを強く残しています。

「つけくに」(つけなくに)

◇◇◇

高野切201511-3自習941-4まずしるものは

「ま(1)しる(2)のは」 これも学習済みですね(^_^)

(1)「徒」(つ)(2)「毛」(も)

「まつしるのは」(まつしるものは)

――「可」や、ここに出てきた「る」など、必ずと言ってよいほど小さく書かれる仮名があることがだんだんわかってきます。

◇◇◇

高野切201511-3自習941-5なみたなりけり

「なみ(1)(2)りけ(3)」

(1)「多」(た)、(2)「那」(な)、(3)「利」(り)でした。

結局、おー、今回はすべて学習済みの字でしたね(^_^)

「なみ多那りけ」(なみたなりけり)

ここでは二回「り」の音が出てきます。最初は今の仮名と同じ形で書かれ、最後は、同じく「利」を字母としながらまるで「わ」のように書かれる「り」になっています。

「わ」の方を『かな字典』でみると――、

高野切201511-3自習 参考「わ」(二玄社『かな字典』より)

うーむ。「り」と「わ」は形だけではほとんど区別がつきませんね(^_^;

ただ、「わ」は実はさほど出てきません。先ほどの『変体がな実用字典』でみてみると――

「わ」――13回

「王」――3回

「和」――1回

『高野切第三種』では13回しか出てきません。対して「わ」に見える「り(利)」は96回も出てきます。「わ」に見える字のほとんどは「り」だということになりますね。

というわけで、「わ」のような形を見たら、まずは「り」と読んでしまう――でいいんじゃないかと思います。「り」と読んで言葉にならないようなら「わ」と読んで検討してみる、という作戦でいってみます(^^)

「わ」があまり登場しない理由としては――、

現代仮名遣いでは「いない、おもない」というように、ワ行五段活用の動詞で未然形などに「わ」が出てきますが、これが歴史的仮名遣いでは

いふ、いず、い

おもふ、おもず、おも

のように「は」と書かれるため、ということが考えられるかもしれません。

一方、古文では助動詞「けり」は頻出するので、どうしても「り」の方は出番が多くなります。一文の終わりに

 「け」または「介」 + 「わ」のように見える字

が出てきたら、無条件に「けり」と読んでしまって、まあ間違いはなかろうと思います。

◇◇◇

では全体を再掲、通して読んでみます。

高野切201511-3手本

の うき毛徒らきも つけくに

しるのは なみ多那なりけ

よのなかの うきもつらきも つげなくに

まずしるものは なみだなりけり

世の中の 憂きもつらきも 告げなくに

まづ知るものは 涙なりけり

(意味)

世の中が悲しいとかつらいとか(誰にも)告げてはいないのに、まず知るものは涙なのだった

「悲しいつらいということを口にしなくとも、涙が流れるの見ればそれはわかる」ということでしょうか。

現代語にするとどうも理詰めの表現になりやすく、元の和歌がもつ「含み」や「余情(よせい/よじょう)――言外に感じる情趣――」は消えてしまいがちです。訳を参考にしつつも、もとの歌から自分なりに感じるものを大事にしたいですね。

今回もお疲れ様でした。それではまた~(^^)/

 

古筆をまなぶ 2 高野切第三種 965 ありはてぬ

前回は歌番号940を学びました。順番では今回941ですが、『書蒼』12月号で965が初段~四段の課題になっているので、先にそちらの内容をみておきたいと思います。

◇◇◇

今回はカメラでなく、スキャナーで取り込んでみました。 かな用の半紙にこんなふうに臨書しているのですが――、

高野切201511-番外『書蒼』12月課題 半紙まるごと

かなり接写しても、ほとんど線が見えないようなところがあったりして、カメラではどうもうまく撮れません。それがスキャナーだとこんな感じになります。見やすくなったと思います。

高野切201511-番外『書蒼』12月課題 自習965-1左:お手本  右:形臨

(文字をなるべくくっきり浮かび上がらせるためにモノクロに加工しています)

では読んでいきます。変体仮名の読み方を一緒に覚えていこうという方は、まずは頭から読んで、読めないところをチェックしておいてくださいね。

◇◇◇

最初の「ありはてぬ」は問題ないですね。その次の「い」も読めます。問題はその次、これは――、

変体仮名007能

「み」かな?と思ってしまいそうですが、「能」を字母とした「の」です。よく出てくる変体仮名です。

その次の「ち」は読めます。

「いち」(いのち)となります。

次の字は「ま」ですが、その次の字が読めず、そのあとの四文字は読めて、こうなります。

「ま(?)まのほと」

変体仮名008徒

これは「徒」を字母とした変体仮名で、読み方は「つ」です。よく出てきます。

というわけで――、

「ままのほと」(まつまのほと)

次は二字、変体仮名が続きます。

変体仮名009多尓

これも、どちらもよく出てくる変体仮名で、上が「多(た)」、下が「尓(に)」で、「たに」。

2行目の最初の字「も」と合わせて――、

多尓も」(たにも)

ここまで、通して書いてみます。

ありはてぬ いちままの ほと多尓

ありはてぬ いのちまつまの ほとたにも

続いて「うき」は読めますが、続く部分――、

連綿こと

ここは変体仮名はなく、連綿(続け書き)を見慣れている方なら問題なく読めると思います。

「うきこと」ですね。

「こ」の二画目がそのまま「と」の一画目につながり一体化しているため、「こ」の一画目が「ゝ」(おどり字)のようにも見えます。「こと」はこのパターンで書かれることがよくあります。

続く部分は、しばらく読めますね。通して書いてみると――、

うきことしけくおもは(1)(2)(3)(4)

わ、終わりにきて四文字すべて変体仮名!

財津一郎きびしい

これは試練かもしれん……なんちゃって(*´Ο`*)/

変体仮名010春毛可那

まず(1)――、

変体仮名012春

これは「春」が字母で、読み方は「す」になります。ちなみに下が「春」の草書体です。

草書「春」

草書「春」『楷・行・草 漢字筆順字典』(岡田崇花先生・編著)より

私は 「す」と「て」の連綿のような形は「春」→「しゅん」→「す」 というふうに覚えました。

次が――、

変体仮名013毛可

(2)(3)は連綿で線が一体化しているので、いっしょに示します。

上の方は「毛」が字母の「も」。字母のイメージがよく残っているのでわかりやすいと思います。

問題はその下。これは「可」(か)です。前回、こんなパターンで出てきています。変体仮名004可し

これは「可し」でした。一画目のヨコ線がテンのように書かれて、下の部分がクルッと右回りする気分で書かれ、そのまま「し」につながっていってます。

もういちど『かな字典』をみてみると――、

2015111かな字典「か」

単独だと「可」の一画目のヨコ線がテンのように書かれますが、このテンのような線が、上の字から来る連綿線と一体化してしまうことがよくあります。すると、今回のような見え方になります。

かな字典をみても、「う」や「の」のように見えるものがありますが、古筆に出てくる「う」や「の」を見慣れると、それらとは形が全然ちがいますので、混同はしないだろうと思います。

というわけで、ここは

毛可」(もか)

最後(4)は――、

変体仮名014那

これも前回、出てきました。

変体仮名005那み多

これは「那み多」(なみた)でした。この「那」がここでも登場しています。

これで最後の四文字が判明!

春毛可那」(すもかな)

では、全体を通して書いてみます。

ありはてぬ いちままの ほと多尓

も うきことしけく おもは春毛可那

ありはてぬ いのちまつまの ほどだにも

うきことしげく おもわずもがな

ありはてぬ 命待つ間の ほどだにも

憂きことしげく 思わずもがな

(語釈)

「ありはてぬいのち」 いつまでもあることのない命

「~だにも」 ~だけでも

「~もがな」 ~であればいいなあ/~であってほしいなあ

(意味)

いつまでも生きられはしない(この)命が終わるまでの間だけでも、嫌なことをしょっちゅう考えずにいたいものだ。

宮地潔興(みやぢのきよき)作。

このあとの966の和歌に詞書(ことばがき)――その歌が詠まれた事情や背景などを述べた言葉――があり、「宮仕へ」を「解けてはべりける時によめる」とあります。官職を解かれて失意のうちに詠われた歌なのですね。

◇◇◇

ありはてぬ命

平安時代の貴族の平均寿命は、男性が33歳、女性が27歳くらいだった――などと言われています。乳児死亡率が高いと当然ながら平均寿命は短くなるので、なかには長命の人もいたわけですが、40歳をすぎればもう老人と意識されていたとか。

大人になればもう、死はそう遠くないところにあったわけですね。命をありはてぬはかないものとして慈しむ気持ちは、現代人よりはるかに強かったことでしょう。

みずの古筆

おつかれさまでした。それではまた(^^)/

古筆をまなぶ 1 高野切第三種 940 あはれてふ

いろは四十七字+「ん」の基礎練習が一巡し、かな書道は俳句の課題に入りました。さらに、もうしばらくすると高野切(こうやぎれ)第三種の臨書が始まるのですが、ひとあし先に稽古を始めています。

以前から勉強したいと思っていたのですが、はやく始めたい理由が実はもう一つあります。

硬筆書写検定1級で、古筆を読ませる問題が出るのです。読めるようになるためには、自分で書いてみるのが一番、ですよね(^^)

そんなわけで、臨書ももちろん載せますが、記事の内容としては読むことの方に重点を置きたいと思います。あなたも一緒に古筆を読む勉強をしていきませんか?

なお、タイトル中の「940」という数字は古今和歌集の歌番号です。

では、はじまりはじまり~(^o^)/

◇◇◇

高野切第三種940形臨1左:お手本  右:形臨

形臨の出来については特にコメントしません。どうせすぐに上手く書けるわけもないので、そこは触りません(^^; もちろん、谷蒼涯先生には教室でみていただきます。繰り返し臨書して、少しずつでも上達していければ嬉しいです。

◇◇◇

一緒に勉強していこうという方は、お手本の方を頭から読んでみて、読めない字をチェックしてから以下をお読みください。お手本の画像を印刷されると勉強しやすいかもしれませんね。

最初の「よみひと」はいいですね。そのあと、

変体仮名001しら須

「しら」のあとの字、これは「須」を字母とした変体仮名です。つまり「しらす」。

よみひとしら(よみひとしらす)

◇◇◇

変体仮名(へんたいがな)とは?

明治中期まで、仮名は今よりたくさん存在し、使われていました。たとえば「ka」と読まれる仮名は今は「か」(字母は「加」)のみですが、歴史的には「可」「嘉」「駕」「閑」など、「加」以外の漢字を元にした仮名も使われてきました。

2015111かな字典「か」『かな字典』(二玄社)

かな字典をみてみると「か」の項だけで何ページもあり、「ka」と読むいろいろな仮名が出てきます。

たくさんあったこれらの仮名が、明治33年(1900年)、小学校教育では原則として一音一字に統一されることになりました。このときに採用されなかった仮名が変体仮名とよばれています。

学校で教えられなくなっても戦前くらいまでは手書き文の中で使われることもあったようですが、今ではあまり目にしなくなりました。下の写真は、今でも看板などに使われ続けている例です。

201511変体仮名の使用例

「生楚者(きそば)」 「うぎ(うなぎ)」 「御手毛登(おてもと)」

◇◇◇

さて、「よみひとしら須(す)」まで読めました。

次の「あはれ」は読めますね。旧仮名遣いです。読み方は「あわれ」になります。

その下、

変体仮名002て不

「て不(ふ)」。読み方は「ちょう」。「ちょうちょう(蝶々)」は旧仮名遣いでは「てふてふ」と書かれます(^^)

次は「ことのはことに」まで、今も使われている仮名なので問題ありませんね。

そのあと、

変体仮名003於く

上の一字は「於」を字母とする変体仮名で「お」。「於」はカタカナの「オ」の字母でもあります。左側がまさに「オ」の形ですよね。

次は「く」。字母である「久」のイメージが強く残っています。

(おく)

字母とは?

その仮名の元となった漢字のことです。たとえば「あ」の字母は「安」、「い」の字母は「以」ですね。

次の「つゆはむ」は読めます。言葉としては「つゆは/む」と切れます。

ここまで、通して書いてみます。

よみひとしら

あはれて ことのはことに くつゆは  む~

「む」のあとに続くのは――、

変体仮名004可し

「うし」?ではありません(^_^; 最初の字は「か」です。字母は「可」。同じ形が上に示した『かな字典』にたくさん出ていますね。

「可し」(かし)

1行目の最後の「む」とつながって「む可し」(むかし)となります。

――それなら「む」は2行目の頭に書いてほしかったなあ。

千年前のご先祖様に文句を言わないように(笑)

次、「をこふる」までは今もある仮名ですね。続けて「む可しをこふる」。

変体仮名005那み多

真ん中は「み」です。「(1)み(2)」

(1)は「那(な)」。(2)は「多(た)」。どちらも頻出します。

(なみた)

その次の「なり」は読めます。そのあと、

変体仮名006介利

「にわ」と読みそうになりますが、「け(介)り(利)」です。

こんなふうに、今のひらがなとまぎらわしい形になるものもありますが、この「わ」に見える「り」は頻出しますので、改めてまた述べたいと思います。

さて、とりあえず最後まで読めました。通して書いてみます。

よみひとしら

あはれて ことのはことに くつゆは む

しを こふる なり介利

すべて現代の仮名にあらためます。

よみひとしら

あはれて ことのはことに くつゆは む

しを こふる なりけり

現代仮名遣いにし、必要に応じ濁点をつけます。

よみびとしらず

あわれちょう ことのはごとに おくつゆは む

かしをこふる なみだなりけり

漢字仮名交じりにあらためます。

よみ人知らず

あわれちょう 言の葉ごとに 置く露は

昔を恋うる 涙なりけり

(語釈)

「露を置く」  露・水滴が生じる

「~てふ」 「~といふ」(と言う)の短縮形

(意味)

作者不詳

「あはれ」という言の葉(言葉)ごとに生ずる露は、昔を恋しく想う涙なのだった

現代語訳はあくまでも意味をつかむためのものにすぎません。意味がつかめたら、古文のまま音読して楽しみたいですね。

◇◇◇

 「あはれ」という言のごとに置く露

の部分は

「あはれ」という言の   ごとに置く露

というふうに、「葉」の一語が前後の文の両方に関わる構造になっています。「葉」の一語から聞き手は「言の葉」と植物の「葉」という二つのイメージを同時に受け取ることになります。

掛詞(かけことば)」という、古今和歌集で特によく使われる技法です。

 

◇◇◇

こうしてこつこつ覚えていけば、千年前に書かれた日本語がだんだん読めるようになっていくはずです。わくわく!

お疲れ様でした。それではまた~(^^)/

ご先祖さま、こんにちは

『書蒼』11月号 学生部毛筆随意課題を自習してみました。

201511自然を愛するお手本(松尾健太先生・揮毫)  中:形臨   右:背臨

かな用の小筆で毛先が開きはじめたのがあったので書いてみましたが、お手本のような太さが出せませんでした。お手本はたぶん6号(中字用)くらいの筆で書かれているのではないでしょうか。

毛筆書写検定の3級でこういう掲示文の問題が出るようなので自習していきたいと思います。

実は、以前に10か月ほど毛筆も勉強していたと書いたのですが、漢字課題より、賞状を主とした実用書道部門の方を中心に勉強していました。

201511賞状

最初ペン習字だけに専念していたのも、実用的な分野、言い換えれば、素人がみても上手下手がわかりやすい分野にしか興味がなかったためです。

毛筆といえば芸術的な、素人にはわかりにくい世界だという思い込みがあって、やってみる気持ちが起こりませんでした。

それが、ペン習字を始めてみると、筆ペンの課題なんてものがある。

「へえ、筆ペンは書道でなくペン習字の方で教えるものなのか」

――試しにやってみると、これがすごくむずかしい……のだけれど面白くもある(^_^)

というわけで徐々に毛筆に興味を抱くようになったのですが、興味の対象は依然として実用書道の方でした。

(だから、いわゆる細楷を美しく書ける人は尊敬と憧れの対象であります。たとえば池袋教室の先輩、金泥の般若心経のGさんのような方(^_^)ですね)

◇◇◇

ただ、芸術書道は興味があまりないといっても、こちらだけは別です。

201511高野切第三種

高野切(こうやぎれ)第三種 (日本名筆選5

古筆・かな書道の世界は別です。

ペン習字でも上級になると、つけペンで古筆の臨書をしたりする場合があります。展覧会で古筆のペンによる臨書作品を観て、平安古筆の存在と、その美しさを知るに至りました。

展覧会にならぶような漢字の条幅作品を観てもあまりピンとこない私ですが、日本の古筆の方はまさに一目惚れという感じで、その美しさに魅了されてしまいました。

――興味の中心は実用書道と、そして、かな書道。そんな私に、日本書蒼院はぴったりの団体だったのです(^_^)

4月から、いろは四十七字+「ん」の基礎練習を続けてきました。こんど4級になり、俳句を書きます。そして初段から古筆の臨書に入っていくのですが、谷先生から、そろそろ自習を始めていこうと言われています。

201511高野切第三種 臨書高野切第三種 初めての臨書

『書蒼』初段~四段のかな課題、高野切第三種の臨書、自習を始めました。

うはあ、ようやくここまで来たな~ (*ノ´▽`*)ノ

高野切さま~、ご先祖さま~、こんにちは~。これからわたくしは、千年前の平安貴族と書を通じて対話を始めます。

――お~、かっこいいこと言ってしまった(^^;

これはもう本当に、一生ものの勉強でございます。ご先祖様よろしくお願いいたします<(_ _)>

( ̄ー ̄)ゞ平安貴族をご先祖様と呼べるのかなあ……。

聞こえませ~ん(笑)

それではまた~(^^)/