「文字の話」カテゴリーアーカイブ

古筆をよむ 11 寸松庵色紙 46 むめのかを(4) 脱字(?)の問題

見つかりました。平安時代に「むめ」「むま」と表記された「梅」「馬」、これらの発音が[mme][mma]だったということを、この本を読んで私は知りました。

img813

『ことばの歳時記』(金田一春彦・著)より

昭和46年(1973年)初版ということですから、相当なロングセラーですね。

「梅・馬」は万葉時代には「ウメ・ウマ」だったが、平安朝になって「ンメ・ンマ」に変化し、そのあと近年になってまた若い人の中に「ウメ・ウマ」と発音する人が増えた――とあります。

私なども「んめ」世代ですが、この本を読むまでは自分は文字どおり「うめ」「うま」と言っているものと思っていました。

でも気をつけて自分の発音を観察してみると、たしかに『んめ』と言っているんですね。表記とは違った発音をしていても人はなかなか気づかないものなんだなあ――と思ったものです。平安びとが「んめ」と言いながら「むめ」という表記に疑問を抱かなかったのも当然ですね(^^)

◇◇◇

では、『寸松庵色紙』古今和歌集46をよんでいくことにします。

ようやく(^_^;

201604-1寸松庵色紙46

ここまで一緒に変体仮名を勉強してこられた方は、まずはすべて自力で読んでみていただきたいと思います。

『高野切』や『粘葉本和漢朗詠集』などとは書きぶりが違うとはいえ、未習の仮名は一つもないので、ほとんど読めてしまうはずです。

◇◇◇

201604-1寸松庵色紙46-1

めのを」(むめのかを)

201604-1寸松庵色紙46-2

うつして」(そてにうつして)

201604-1寸松庵色紙46-3

「とめたら」

201604-1寸松庵色紙46-4

者春久とも」(はるはすくとも)

私は「春」のところで一瞬だけひっかかりましたが、頭の中で線を追ってみたらすぐに「春」とわかりました。読みにくい字も頭の中で、または指で線を追って書いてみると案外すっと読めてしまうことがあります。

201604-1寸松庵色紙46-5

たみ万志」(かたみならまし)

散らし書きのご紹介ということで今回はこれを取り上げましたが、よみは特にむずかしくはなかったと思います。

むめのかを そてにうつして とめたら(ば)

はるはすくとも かたみならまし

梅の香を 袖にうつして とめたら(ば)

春は過ぐとも かたみならまし

(語釈)

かたみ  ふつう漢字では「形見」と書かれます。亡くなった人・別れた人を思い出すよすがとなる物。

語源には「片身」説というのもあり、人が別れるときに一つの物を半分にして、それぞれ「片身」を持ち合って相手を思い出すよすがとしたことから――と説明されます。

~ならまし  なるだろうに

(意味)

梅の香りを袖にうつして留めておいたなら

春はすぎゆくとも(香りが春を思い出す)よすがとなるだろうに

201603梅の香

平安びとの梅への愛は本当に深いものがありますね。やっぱりご先祖様ですね(^^)

◇◇◇

さて、また長くなって申し訳ないのですが、ここでは終わることができません。まだ一つ、考えなければならない問題が残っています。

「とめたら」のあとの一字は本当に脱字なのか

この散らし書きでは三句目、本来なら五文字で「とめたらば」と書くべきところを「とめたら」としか書いていません。古文としても、五七五七七の和歌のリズムとしても変ですよね。

この部分は脱字だと簡単にすませている解説書が多い、というか私がよんだ何冊かの本はみなそれで通り過ぎているのですが、これは本当に脱字なのでしょうか?

行書きの古筆の中には、筆写の際にうっかり脱字をしている例や文言が変わってしまっている例が見られるのは事実です。

しかし、この散らし書きの作者がいかに繊細に布置・字配りを考えてこれを書いているかを最初にみましたよね。こういう人が「うっかり脱字」などするものでしょうか?

もう一度この写真を見てください。

201604-1寸松庵色紙46解説1

この散らし書きの構成をみると、「とめたら」の下にもう一字を入れると行末を結ぶ曲線の形が崩れて台無しになります。だから「たら」の下に一字を入れるつもりで書き忘れた――という可能性は考えにくいです。

とすると、三行目の行頭の「盤(は)」が「とめたらは」の「は」なのであって、次の「はる」を書く際に一字目の「は」を落としてしまった?――という可能性も……あるでしょうか。

でも、「はる」の「は」をうっかり書き忘れる?これだってちょっと、いや、かなり考えにくいことですよね。

そこまで考えて、ハッと思いついたことがあります。

 とめたら→は→るはすくとも

この「は(盤)」は、二字つづく「は」の両方を兼ねているのではないか?

和歌に「掛詞(かけことば)」という技法がありますね。

花の色は うつりにけりな いたづらに

わが身世にふる ながめせしまに (古今和歌集113)

百人一首に所収された、小野小町の、あまりにも有名な歌です。学校の古文の時間に掛詞の例としてよく挙げられる歌だと思います。「ふるながめ」が掛詞になっています。

世にふるながめ(この世で時を過ごす、その眺め)

ふるながめ(降る長雨)

これと同じように――

とめたら は るは

一字で両方の「は」を兼ねた、そういう技法なのだと考えると、初めて納得がいくような気がします。

もちろんこれは単なる思いつきで、そう確信できる材料は何もなく、気分はもやもやしています(苦笑)。私自身は、他にこのような例をみたことがありません。同じような例がいくつかでも見つかれば面白いことになるのですが。

あなたはどう思いますか?

こういう技法(?)を使っているものが他にもあるのだろうか?古筆をいろいろよんで探していきたいと思います。古筆を楽しむネタがまた増えました(^^)

◇◇◇

長くなっていますが、もう少しだけおつきあいください。

( ̄ー ̄)ゞ 開き直ったな(笑)

この歌は『高野切第一種』の方でも取り上げられています。参考までにご紹介しておきます。

これも既習の仮名ばかりなので、まずはぜひ自力で通読してみてください。

201604高野切第一種「むめのかを」

むめのを そて とゝめては

るはくと ならまし

『寸松庵』では「とめたら(ば)」になっている部分が、こちらでは「とどめては」になっています。手元にある古今和歌集の解説書もみなこの形になっています。これだと「とどめておくことができたら」のような意味になり若干ニュアンスが変わります。

ここでは「无」を[mu]でなく[mo]と読む例が出てきました。「无」には[mo]の読みもあること、忘れないであげてください(^^)

◇◇◇

「むめ」の問題から「ん」の変遷まで、いろいろ詰め込んだせいで長々と4回の連載になってしまいました。大変お疲れ様でした。

37字を勉強したあと、なかなか新しい変体仮名が出てきません。でも37字がわかるだけでもけっこう読めてしまうものですね。古筆の勉強って意外に労力対効果が高いかも(^^)


■■■ 草書学習記録 4/4(月) ■■■

21日目の48字テスト。

20160404草書学習1

 縛  博  専  特  守  尊

 四  駕  加  驚  敬  馬

 禾  高  尚  将  得  罵

 浄  争  府  付  朗  稿

 預  務  茅  矛  事  静

 姪  室  握  屋  至  柔

 致  言  盛  成  窒  到

 源  原  減  感  咸  誠

「埼・崎・奇・河・何・可」の6字を学習。通算132字。

20160404草書学習2


それではまた(^^)/

古筆をよむ 10 寸松庵色紙 46 むめのかを(3) 「ん」の誕生

古語の「め(梅)」、「ま(馬)」、それから「まる(生まる)」、「もる(埋もる)」など、

ま行音が後ろに続くときの「む」

は、鼻音[m]で発音されたことがわかっています。

口を閉じたまま「む」と言って、続けて「め」と言う。[mme]はそんな発音になります。

これを初めて知ったのはたぶん30年ほど前、どなたか国語学の先生が一般向けに書かれた本にあったと記憶しているのですが、今ちょっと書名がわかりません。本棚に残っていることば関係の本をパラパラめくって調査中です。書名がわかったらお伝えします。

◇◇◇

平安びとは「むめ」と書いて実際には[mume]でなく[mme]と発音していました。現代人も「あんま」[amma]などのように、[m]の前でこの音を発音しており、その表記に「ん」という仮名を使っています。しかし平安時代にはこの音を表すための字がなかったので、「む」が使われていたわけです。

では、平安びとの中に――

[mme]を書くとき、本当の発音と違って「むめ」としか書けない。[m]を表記するための字がないんだよなあ。不便だなあ。

なんていう思いがあったのでしょうか?

よほど耳の鋭い人以外は、そんなことは考えなかったと思います。

文字表記というのは多分に習慣的に決まっている部分もあって、親は子に、「むめ」と書きながら[mme]はこう書くんだよ、と教えていたことでしょう。それを子どもが

――え?「む」は[mu]って読むんだよね。でも[mume]って読まず[mme]?なんか変じゃない?[u]はどこへ行ったの?

なんてツッコむことはなかったでしょう(笑)

今の私たちだって、文字どおりでない発音をいくらでもしています。たとえば促音(っ)は――、

た[atta]

ぱり[yappari]

こう[gakko:]

実際の発音は[p]だったり[k]だったりもするのに、全部「っ」ですませていますが、「やっぱり」のときにも「っ」と書くのは変だぞ、なんて気にする人はまずいませんよね(^^)

◇◇◇

さて、「むめ」の読み方の確認が終わったところで「むめのかを」をよんでいこうと思……っていたのですが、せっかくここまで来たので――、

「无」を字母とし「む」と読まれた仮名が「ん」とのみ読まれるようになった経緯

まで書いてしまおうと思います。

◇◇◇

それには、助動詞の方の「む」についてみておく必要があります。

いかならはどう読まれたか

枕草子に「香炉峰の雪」という有名な段があります。古文の時間に読まれた方も多いでしょう。

中宮定子(藤原定子)様が清少納言に対して

「少納言よ、香炉峰の雪いかなら(雪はどうだろうか)」

とおっしゃったので、少納言は(どうぞご覧ください)とばかりに御簾(みす)―すだれ―を高く上げさせます。

香炉峰は中国の山です。日本にいる清少納言にその様子がわかるわけもありませんが、定子様が茶目っ気たっぷりにこうお尋ねになりますと――白居易の詩に「香炉峰の雪は簾-すだれ-をかかげて看る」とあるのを踏まえ、清少納言が機知をきかせてこう応じてみせたわけです。それを見た他の女房たちが「まあ、やっぱりすごい方だわ」といたく感心する、という場面ですが――、

これも、平安時代には「いかなら」という発音になっていたと考えられています。

推量や意志などをあらわすこの助動詞「む」は平安時代にはすでに「ん」に変わっていました。しかしこの音を表記するための字はまだなく、人々は「ん」と発音しながらも、あいかわらず「む」と書き続けていました。

日本語に頻出するこの助動詞「む」の音が変化したことの影響は多大でした。助動詞「む」を「ん」と読む時代が続くうちに、「ん(无)」に本来[mu]という読みがあったことがだんだん忘れられていきます。

こうして、「无」を字母とし、かつては「む」と読まれた仮名「ん」は、もっぱら「ん」とのみ読まれるようになっていきます。

201604「无」

簡単にまとめてみます。

  • 「无(む)」(「無」の異体字)を字母として「ん」という仮名が生まれた。
  • 字母の読みどおり「む」と読まれたが……、
  • 人々が話す言葉の方に「む」→「ん」という変化が起こった。
  • 人々はこの字をもっぱら「ん」の音で読みはじめる。
  • 人々はいつしかこの字の読みが本来は「む」であることを忘れていった。

「ん」にはこのような変遷があったのですね。

(古筆中の「无」は「も」と読まれる場合もありますが、ここではふれませんでした。)

◇◇◇

さて、それでは「むめのかを」をよんでい……くのは、長くなりすぎるので次回にさせていただきます。

まだ筋肉痛が……いたた(T~T;


■■■ 草書学習記録 4/3(日) ■■■

20日目の48字テスト。

20160403草書学習1

 等  持  侍  詩  言  時

 縛  博  専  特  守  尊

 四  駕  加  驚  敬  馬

 禾  高  尚  将  得  罵

 浄  争  府  付  朗  稿

 預  務  茅  矛  事  静

 姪  室  握  屋  至  柔

 致  言  盛  成  窒  到

「源・原・減・感・咸・誠」の6字を学習。通算126字。

20160403草書学習2


それではまた(^^)/

古筆をよむ 9 寸松庵色紙 46 むめのかを(2) 「むめ」はどう読まれたか

『寸松庵色紙』の古今和歌集46をよんでいくのですが、その前にちょっとかたづけておきたい問題があります。

201604-1寸松庵色紙46「无め」

この部分の読みについて、です。

最初の、現代人なら「ん」と読むこの字の字母は「无」で、「無」の異体字ですから読みは「む」です。したがって今のひらがなで書くと「むめ」になります。それでブログタイトルも「むめのかを」としました。

しかし、平安びとはこの「むめ」を文字どおり[mume]と読んでいたのでしょうか。「むめ」とは「梅(うめ)」のことなんですが、平安時代には梅を[mume]と言っていたのでしょうか。この問題について考えてみたいのです。

例によってちょっと長くなります(^_^;

◇◇◇

古筆をよんでいきますと、たびたびこの字に出会います。

201602-1高野切第一種48-1-2「ん」

現代文の中でこの字を見れば、誰でも迷うことなく

――「ん」

と読みますよね。

ところが、この「『ん』と読む」というのが、実は言うほど簡単なことではありません。

もし、外国人(※)にこの字を見せられて「どう読みますか?発音してみてください」と言われたらどう答えますか?

(※)「外国人」 ここでは、(国籍に関係なく)日本語以外の言語を母語とする人、の意味で使っていきます。

――「」です。「」。

んー、この答えでは悩んでしまう外国人が多そうです。ここで発音されている二つの「ん」は、その外国人の母語では同じ音とは認識されない可能性があるからです。

――「ん」って、後ろにどんな音がくるかで発音が違うんだよね。たとえば「んです」のように後ろに[d]の音がきたときの「ん」と、そのあとの「ん」のように単独で発音されたときとでは音が違う。

ピンポ~ン!そうなんです。

ただ、ここで「音が違う」というのも言うほど簡単なことじゃなく、厳密には「(日本語と違って)違う音として認識する言語がある」(多い)ということなのですが、話が長くなりすぎるので、そこには踏み込みません(^^)

書道とは関係のないお話かもしれませんが、「むめ」を平安びとは実際にはどう読んでいたか、気になりますよね。それを考えるマエフリとして、そもそも「ん」ってどんな音なのか、ちょっと確認しておきたいと思います。

◇◇◇

外国人が、

――ワタシワ キノー ニホネ/ニホンネ キマシタ。

というような言い方をするのを聞いたことがありませんか?

母語が英語でも中国語でも韓国語でも、こういう言い方をする人が実はけっこういます。

日本人(日本語が母語の人)が聞くと「ニホネ/ニホンネ」のところが変ですよね。どうしてこういう発音になってしまうんでしょうか。

これは、その人が日本語の「ん」=[n]と覚えて、常に「ん」はその音なんだと思っている場合に起こります(そう思うのは普通のことです)。[n]は舌先を上歯茎の裏につけて出す音ですが、これをやって、そのあとすぐに「へ」[e]を続けると[n+e]で[ne]あるいは[nne]という発音になってしまうわけです。

「ワン」「アウト」が「ワンアウト」でなく「ワンナウト」になるのと同じ理屈です。

このことから、後ろに[e]などの母音がくるときに「ん」を[n]で発音すると日本語らしくない発音になってしまうことがわかります。

「ん」+母音 

このとき、「ん」は鼻母音(びぼいん)とよばれる音になります。

鼻母音とは

口と鼻は奥でつながっていますよね。母音アイウエオは、鼻につながる通路を閉じて、鼻に息がもれないように発音します。ア、イと発音してみると、息は鼻にもれず、口からすべて出ていることがわかると思います(よくわからないという方は、鼻をつまんでア、イと言ってみてください)。

次に、鼻につながる通路をふさがず、鼻に息をもらしてア、イと言ってください。「んあ、んい」というような音に変わりますよね。「んが、んぎ」と書いた方がいいような音になっているかもしれません。

これが鼻母音です。

「日本へ」(にほんえ)のように後ろに母音がくるとき、日本人は「ん」をこの鼻母音で発音しています。

外国人の友達で「ニホネ/ニホンネ キマシタ」と言ってしまう人がいたら、「ん」を[n]で発音するのをやめて――つまり舌先を上歯茎の裏につけるのをやめて下におろして――息を鼻の方にもぬいてやるようにすれば日本人のような発音になるよ、と教えてあげてください(^^)

◇◇◇

というわけで、「ん」は置かれた環境によっていろいろな発音で読まなければならない、外国人にはちょっとメンドクサイ字だということがわかりました。

もう一つだけやってみましょうか。

日本人のかたは「ん」を発音しているときの自分の唇に意識を集中して、次の文を読んでみてください。

にほばしであも買った。

3つの「ん」、すべて唇がいちど閉じる[m]の音になっていたと思います。つまり

→ [b][p][m]の前で「ん」は[m]と発音される

ことがわかります。

◇◇◇

日本人はふつう意識していません(意識する必要がない)が、こんなふうに後ろにくる音によって「ん」はいろいろな発音になります。

他の音の前ではどうなるか、これは長くなりすぎるので省略します。興味のある方は「撥音の発音」――はつおんのはつおん(^^)――などと打って検索してみてください。

◇◇◇

さて、マエフリが終わりました(^^)

201604-1寸松庵色紙46「无め」

では、この「无め」を平安びとがどう読んだか、という問題にもどります。

先に結論を書きます。

これを平安びとは「んめ」と読みました。

――えっ?でも「ん」で始まる単語なんてないよね?

はい、いちおうそういうことになっていますよね。シリトリで「ん」で終わる言葉を出したら相手が答えられないということで負けになります。でも実際には――、

今でも世代によっては「梅」や「馬」を、「うめ」「うま」と書くよりは「んめ」「んま」と書いた方がよさそうな発音をしている人がいます。でも「ん」で始まるようには書かない、というお約束になっているだけです。

私なども会話の中で常に文字どおり「うめ」と言っているかと言えば、「う」をはっきり響かせず、「んめ」と書いた方がいいような発音になっていることが多々あると思います。

――「んめ」「んま」と書くとして、どんな発音になるの?

さきほど書いたように、

「ん」+[m]

のとき、「ん」は[m]になりますから、[mme]、[mma]ですね。

◇◇◇

ここにたどりつきたいがための、ちょっと長いマエフリなのでした(^_^;

201604-1寸松庵色紙46「无め」

これを平安びとは[mme]と読んだ(「梅」はそういう発音だった)そうです。

でも、平安びとの意識としては文字どおりに読んでいるつもりだったのです。

――どういうこと?

明日に続きます。


■■■ 草書学習記録 4/2(土) ■■■

19日目です。まず48字テスト。

20160402草書学習1

 日  寺  鶴  鳩  九  鷺

 等  持  侍  詩  言  時

 縛  博  専  特  守  尊

 四  駕  加  驚  敬  馬

 禾  高  尚  将  得  罵

 浄  争  府  付  朗  稿

 預  務  茅  矛  事  静

 姪  室  握  屋  至  柔

そのあと6字「言・盛・成・窒・到・致」を学習。

20160402草書学習2

「言」はちょっと前に既習でした。さっそくだぶってる(^_^;

稽古時間はご覧のとおりです。通算120字。


それではまた~(^^)/

Why?Chinese people…!

漢字の一、二、三は線の数がそのまま数字の概念を表しております。初めて漢字を習う外国人にもわかりやすく好評です(ホンマかいな)。

――カンジ、ワカリヤスイネ。デワ~、4ワ線4本ダネ~♪

エ! )? ナンダコレ? It does not make sense!

201603厚切りジェイソン

と大声で叫ぶ――というアメリカ人、厚切りジェイソンの芸が人気であります。「銅は金と同じ?……違うだろぉぉぉっ!」なんてのもけっこう笑えました(^o^)

)甲骨文字の時代には線四本でよかったみたいです(^^) ↓

201603『常用字解』「四」

『常用字解 第2版』(白川静・著)より

実は草書の勉強でも、ジェイソン氏のように叫びたくなることがときどきあります。

たとえば、これ。いちばん左は「寺」という字の草書体です。

201603[

草書 「寺」  「持」  「侍」  (字典1より)

ご覧の通り、「てへん」や「にんべん」が草書で書ければ、「寺」を覚えた瞬間に、自動的に「持」や「侍」も書けるようになります。こういうシステマティックなところが、漢字のいいところですね。

――いいね。「ひへん(日)」(「にちへん」とも)も書けるから、「時」も簡単だな。

当然そう予想して字典をみてみますと――

201603草書「時」

201603厚切りジェイソン

厳密には「Why?Chinese people!」だけど(笑)

しかし、なんで「日+寸」なんでしょうね。「土」はどこへ消えた?その昔、黄河の氾濫で流されたのか?(^o^)

いやいや、笑い事ではありません(笑) ←と言いながら笑っている。

こういうのは記憶の負担になりますよね。なんで「時」だけ「寺」を使わないのよ……。

こういう、部品の組み合わせに整合性のない形を覚えるのは疲れるわけです。「日+寺」の、すっきりして覚えやすい「時」であってほしいではありませんか。

そういう「時」を載せてくれている字典はないものか……?

というわけで、別の字典で探してみることに。

201603三上先生字典「時」

字典2

こっちも「日+寸」かあ。これで覚えるしかないのかなあ?めんどくさいわあ。

もう少しみてみます。

201603狩田先生字典「時」

字典3

おお!「日」に「寺」!ありました!(下の二つが草書です。)

201603タスカリマシタ

どうも草書の「時」には二つの字体があるようですね。

201603江守先生字典「時」

字典4

こっちにもあった!この字典も二つの形を載せています。

――というわけで、草書の「時」には、機械的に「日+寺」とした字体と、慣用的に「日+寸」と書かれる字体があることがわかりました。

しかし、この「日+寸」はどこから来ているんだろう。いつもの『角川書道字典』をみておくことにします。

201603『角川書道字典』「時」

うーむ。なんか「日+寸」がいっぱいありますねえ。草書になるとこの形の方が圧倒的多数です。草書の代表的な古典、王羲之の『十七帖』や孫過庭の『書譜』もこっちです。

草書としては「日+寸」の方が多数派なのだ!

記憶の負担にならない、部品の組み合わせ的にわかりやすい方を選んで覚えようと思ったのですが、『十七帖』や『書譜』まで「日+寸」じゃあしょうがない、こっちで覚えておきますか(^_^;

ナガイモノニ  マカレテオキマス   ┐(´ー`)┌

201603それでいいのだ

ま、調べているうちにどっちも覚えてしまいましたけど(笑)

( ̄ー ̄)ゞ 結局、余計に脳に負担かかったんじゃないの?

……(苦笑)

なにしろ、ふだん見ることもほとんどない草書を最終的には二千字ほども覚えようというのですから、なるべく記憶の負担は減らしたいわけです。一つの部品を覚えたら、できるだけ芋づる式に覚えていきたいですよね。

でも、整合性無視(?)の慣用的な形、部品の単純な組み合わせでは書けない字もけっこうあるんですよねえ。そういうのはムリヤリ覚えるしかありません。ちょっとしんどい(^_^;

◇◇◇

字典1~4の書名です。

字典1 『楷・行・草 漢字筆順字典』(岡田崇花先生・編)

字典2 『三上秋果の常用漢字硬筆字典』

字典3 『ペン字 改訂常用漢字の三体』(狩田巻山・著)

字典4 『楷行草 筆順・字体字典』(江守賢治・編)


■■■ 草書学習記録 3/26(土) ■■■

12日目。まず48字テスト。いちおう書けていますが、形の悪いものも。

20160326草書学習1

 肖  期  其  邪  牙  都

 口  賑  貝  娠  女  辰

 張  弓  長  辱  寸  唇

 純  糸  屯  套  帳  巾

 才  熊  罷  能  鈍  金

 閉  冴  芽  財  材  木

 路  各  足  鳴  嶋  鳥

 日  寺  鶴  鳩  九  鷺

そのあと6字「・言・詩・侍・持・等」を学習。

20160326草書学習2

稽古時間20分。通算78字。


それではまた(^^)/

中国人の愛には心がない?

きょうは旧字の話題です。

硬筆書写検定の2級では旧字を読ませる問題が、1級では書かせる問題があります。2級の問題はこんな体裁で出題されます(実際の出題は5題)。

201511旧字体問題

答えはマスの中に楷書で書きます。解答はのちほど。

◇◇◇

さて、日本では戦後、当用漢字表で新字体が制定されました。それと対比して、それ以前に使われていた字体のことを旧字体とよぶようになりました。

ただ、これらの字体は国や地域によっては今でも使われています。

ご存じのとおり、台湾がそうですね。ほかに香港、マカオなど。また、在米華僑などの間でもかなり使われているようです。また、韓国では現在ほとんど漢字が使われませんが、使う場合には昔ながらのこの字体になります。

こちらは現在も使われている字体なので当然「旧字」とはよばれません。中華人民共和国成立後の文字改革で生まれてきた「簡体字」との対比で一般に「繁体字」とよばれています。

201511繁体字の雑誌と看板台湾の雑誌、看板

娛樂(娯楽)(薬)專賣(専売)

などの繁体字が見えます。これらを簡体字にすると……、

娯楽→娱乐、薬→専売→专卖

ずいぶん変わりますよね(^^;

簡体字は漢字好きの日本人にはあまり評判がよろしくないようで、簡略化のしすぎだとか気持ち悪いとか言う人も少なくないようです。

たしかに――

←実はなんてのを初めて見たときには私も

201511なんじゃこりゃー

なんじゃこりゃー!

と、あっけにとられたものです(笑)

愛→を見たときには――

中国人の愛には心がないんかい!

と思わずツッコミを入れてしまったほどです(嘘です)。

中国語会話のテキストでこんな文をみて

从九点到五点工作 (九時から五時まで働く)

て何だよ。もとの漢字がわからんわ!

調べてみたらこれはの簡体字なんですね。

ええっ!なんでになるんだろう???

この謎はすぐに解けました。従の旧字にヒントがあったのです。

つまり確かに从が含まれていますよね。

ここでまた『常用字解』のお世話になってみます。

201511常用字解「従」『常用字解 第二版』 白川静

なんと、のもとの字だったんですねえ。人がふたり、並んで歩いている形。後ろ(右)の人が前の人に「従」っている、というわけです。

日本ではを簡略化して新字体をつくるのに、あろうことか、肝心なの形を変えてしまったんですね。たった一画へらすために、この字のDNAを破壊してしまったのです。の形しか習っていない世代の私は、簡体字をみても元の字をまるで類推できませんでしたが、繁体字を知っている台湾人などは、どこから来た形かわかるんですね。こんなのもあります。

丰富

なんでしょう、これ。実は、豊富です。

ええ!なんで豊が丰になっちゃうの?これも旧字(繁体字)を見れば一目瞭然なのでした。

豐 

本来の漢字を知っていれば、ものすごい簡略化ではあるけれど、が出てくる理由はわかりますね。

こうしてみていくと、日本の漢字にもかなりいいかげんな簡略化をしたものがあることがわかります。

中国の簡体字を勝手に上から目線でいろいろ批判する人々が日本にはいるようですが、日本の新字体にも同様の批判にさらされうる部分がけっこうある、ということも視野に入れておきたいものですね。

そうしないと、ちょっと恥ずかしいことになってしまうかも。

いや~、漢字って本当におもしろいものですね!

( ̄ー ̄)ゞ あれ、きょうは水野さんは出てこないの?

201511さよならさよなら

ミ(ノ;_ _)ノ =3  ソッチデキタカ

◇◇◇

旧字の解答です。

麦 労

称 礼

糸 変

庁 伝

弐 医

どのくらいできましたか?それではまた~(^^)/