古筆をまなぶ 1 高野切第三種 940 あはれてふ

いろは四十七字+「ん」の基礎練習が一巡し、かな書道は俳句の課題に入りました。さらに、もうしばらくすると高野切(こうやぎれ)第三種の臨書が始まるのですが、ひとあし先に稽古を始めています。

以前から勉強したいと思っていたのですが、はやく始めたい理由が実はもう一つあります。

硬筆書写検定1級で、古筆を読ませる問題が出るのです。読めるようになるためには、自分で書いてみるのが一番、ですよね(^^)

そんなわけで、臨書ももちろん載せますが、記事の内容としては読むことの方に重点を置きたいと思います。あなたも一緒に古筆を読む勉強をしていきませんか?

なお、タイトル中の「940」という数字は古今和歌集の歌番号です。

では、はじまりはじまり~(^o^)/

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高野切第三種940形臨1左:お手本  右:形臨

形臨の出来については特にコメントしません。どうせすぐに上手く書けるわけもないので、そこは触りません(^^; もちろん、谷蒼涯先生には教室でみていただきます。繰り返し臨書して、少しずつでも上達していければ嬉しいです。

◇◇◇

一緒に勉強していこうという方は、お手本の方を頭から読んでみて、読めない字をチェックしてから以下をお読みください。お手本の画像を印刷されると勉強しやすいかもしれませんね。

最初の「よみひと」はいいですね。そのあと、

変体仮名001しら須

「しら」のあとの字、これは「須」を字母とした変体仮名です。つまり「しらす」。

よみひとしら(よみひとしらす)

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変体仮名(へんたいがな)とは?

明治中期まで、仮名は今よりたくさん存在し、使われていました。たとえば「ka」と読まれる仮名は今は「か」(字母は「加」)のみですが、歴史的には「可」「嘉」「駕」「閑」など、「加」以外の漢字を元にした仮名も使われてきました。

2015111かな字典「か」『かな字典』(二玄社)

かな字典をみてみると「か」の項だけで何ページもあり、「ka」と読むいろいろな仮名が出てきます。

たくさんあったこれらの仮名が、明治33年(1900年)、小学校教育では原則として一音一字に統一されることになりました。このときに採用されなかった仮名が変体仮名とよばれています。

学校で教えられなくなっても戦前くらいまでは手書き文の中で使われることもあったようですが、今ではあまり目にしなくなりました。下の写真は、今でも看板などに使われ続けている例です。

201511変体仮名の使用例

「生楚者(きそば)」 「うぎ(うなぎ)」 「御手毛登(おてもと)」

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さて、「よみひとしら須(す)」まで読めました。

次の「あはれ」は読めますね。旧仮名遣いです。読み方は「あわれ」になります。

その下、

変体仮名002て不

「て不(ふ)」。読み方は「ちょう」。「ちょうちょう(蝶々)」は旧仮名遣いでは「てふてふ」と書かれます(^^)

次は「ことのはことに」まで、今も使われている仮名なので問題ありませんね。

そのあと、

変体仮名003於く

上の一字は「於」を字母とする変体仮名で「お」。「於」はカタカナの「オ」の字母でもあります。左側がまさに「オ」の形ですよね。

次は「く」。字母である「久」のイメージが強く残っています。

(おく)

字母とは?

その仮名の元となった漢字のことです。たとえば「あ」の字母は「安」、「い」の字母は「以」ですね。

次の「つゆはむ」は読めます。言葉としては「つゆは/む」と切れます。

ここまで、通して書いてみます。

よみひとしら

あはれて ことのはことに くつゆは  む~

「む」のあとに続くのは――、

変体仮名004可し

「うし」?ではありません(^_^; 最初の字は「か」です。字母は「可」。同じ形が上に示した『かな字典』にたくさん出ていますね。

「可し」(かし)

1行目の最後の「む」とつながって「む可し」(むかし)となります。

――それなら「む」は2行目の頭に書いてほしかったなあ。

千年前のご先祖様に文句を言わないように(笑)

次、「をこふる」までは今もある仮名ですね。続けて「む可しをこふる」。

変体仮名005那み多

真ん中は「み」です。「(1)み(2)」

(1)は「那(な)」。(2)は「多(た)」。どちらも頻出します。

(なみた)

その次の「なり」は読めます。そのあと、

変体仮名006介利

「にわ」と読みそうになりますが、「け(介)り(利)」です。

こんなふうに、今のひらがなとまぎらわしい形になるものもありますが、この「わ」に見える「り」は頻出しますので、改めてまた述べたいと思います。

さて、とりあえず最後まで読めました。通して書いてみます。

よみひとしら

あはれて ことのはことに くつゆは む

しを こふる なり介利

すべて現代の仮名にあらためます。

よみひとしら

あはれて ことのはことに くつゆは む

しを こふる なりけり

現代仮名遣いにし、必要に応じ濁点をつけます。

よみびとしらず

あわれちょう ことのはごとに おくつゆは む

かしをこふる なみだなりけり

漢字仮名交じりにあらためます。

よみ人知らず

あわれちょう 言の葉ごとに 置く露は

昔を恋うる 涙なりけり

(語釈)

「露を置く」  露・水滴が生じる

「~てふ」 「~といふ」(と言う)の短縮形

(意味)

作者不詳

「あはれ」という言の葉(言葉)ごとに生ずる露は、昔を恋しく想う涙なのだった

現代語訳はあくまでも意味をつかむためのものにすぎません。意味がつかめたら、古文のまま音読して楽しみたいですね。

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 「あはれ」という言のごとに置く露

の部分は

「あはれ」という言の   ごとに置く露

というふうに、「葉」の一語が前後の文の両方に関わる構造になっています。「葉」の一語から聞き手は「言の葉」と植物の「葉」という二つのイメージを同時に受け取ることになります。

掛詞(かけことば)」という、古今和歌集で特によく使われる技法です。

 

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こうしてこつこつ覚えていけば、千年前に書かれた日本語がだんだん読めるようになっていくはずです。わくわく!

お疲れ様でした。それではまた~(^^)/