「道」にはなぜ「首」があるのか

このブログに掲載した写真の字の「しんにょう」の形が少しおかしかったということで、谷蒼涯先生が改めて書き方を教えてくださいました。目下、「道」という字で稽古を続けているところなのですが……、

201510道

きょうはその書き方ではなく、この漢字のなりたちについてのお話です。

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「道」を書いていると、思い出すことがあります。実はこれ、意外に怖い漢字なのです。

201510「道」なりたち

『常用字解(第二版)』白川静 より

日本、中国の古代文化、ひいてはひろく漢字文化圏全体の文化について多大な研究成果を上げたとして文化勲章を受けられた白川静博士によれば――

古い時代には、他の氏族のいる土地は、その氏族の霊や邪霊がいて災いをもたらすと考えられたので、異族の人の首を手に持ち、その呪力(呪いの力)で邪霊を祓い清めて進んだ。その祓い清めて進むことを導(みちびく)といい、祓い清められたところを道といい、「みち」の意味に用いる」 『常用字解(第二版)』より

「道」の「首」は、なんと文字通りの首だったのです(・×・;)))コワ~

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さて、こんな怖い漢字のなりたちを小学生向けの漢字辞典ではどんなふうに説明しているのでしょうか。

201510漢字をおぼえる辞典「道」

 『小学生のための漢字をおぼえる辞典(第四版)』

辶は道を歩くことを表し、首(シュ)がドウと変わって読み方と「長くのびる」いみをしめしています。『歩いてゆく道、すじみち』のいみにつかわれます」『小学生のための漢字をおぼえる辞典(第四版)』より

う~ん。わかったようなわからないような?

「首」がどうして「長くのびる」の意味になるんだろう?

「首を長くして待つ」なんて言い方はあるけれど、連想ゲームで「首」と言って直ちに「のびる」と答える人なんて、どのくらいいますかねえ?

古代中国で生まれた漢字には、当時の人々の呪術的な世界観が色濃く反映されています。現代の私たちからみれば、おどろおどろしい側面も存在します。そこから目を背ければ漢字という文字の体系的な理解はむずかしくなってくるでしょう。

そういうものは子どもたちの目から隠すべきだ――というような教育委員会的な(?)思いが、もしかしたら編者にはあるのでしょうか。長くのびる云々の説明はどうにも、苦し紛れのこじつけ、という感じがしてしまいます。

『漢字をおぼえる辞典』は小学生向けの漢字辞典として非常によくできていると思うのですが、このあたりの煮え切らなさが玉に瑕です。

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実は、白川博士の研究成果を全面的に採り入れた、小学生向けの漢字の学習書が出ています。

201510漢字なりたちブック2『漢字なりたちブック 白川静文字学に学ぶ』伊東信夫・著

小学校で習う漢字1006字すべてについて、小学生にも読めるように白川学説を紹介しています。学年別に6分冊になっています(セット販売もあり)。

この本で「道」がどう説明されているかと言うと……

201510漢字なりたちブック「首」『漢字なりたちブック 2年生』より

小学生向けに文はやさしくなっていますが、内容は同じですね。 あっぱれ!

近所の子どもたちにこういった説明をしてあげると、「えー、うそー!」「こわーい」「すごーい!」等々いろいろな反応がありますが、それぞれの漢字のもつこういった物語性には総じて興味を示します。一部の大人が心配するような(?)、ネガティブな反応は見られません。

子どもたちは、怖い話もけっこう好きなんですよね。そのなりたちの怖い部分も含めて学んだ方が、漢字の学習はより興味深く、おもしろいものになるんじゃないかと思う次第です。

いや~、漢字って

( ̄ー ̄)ゞ くると思ったよ(笑)

それではまた~(^^)/