行書の原理を探る 1 連続する横線

またまた新企画でございます(^^)

行書を書いていると「あれ、この線はつなげていいんだっけ?」なんて悩んでしまい、字典で確認しなければなくなる場面が時々あります。書き方のルール、原理というものをちゃんと意識せずにぼんやりと稽古してきたせいでありましょう。

いつか人に教えたいという人間が、こんなことではいけませんよね(汗)自信をもって行書が書けるようになるためには、そして人にもわかりやすくその書き方を教えられるようになるためには、行書の決まり、原理というものを整理して意識化しておく必要がある――

というわけで始めてみます(^^)

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原理を探るための題材は、『書蒼』のペン習字課題のお手本や、岡田崇花先生の字典から主にいただいていくことにします(競書誌『書蒼』についてはこちらをどうぞ)。

201601行書の決まり01手本『書蒼』28年4月号 一般部 ペン習字課題

岡田崇花先生揮毫のお手本の中の一つ、あるいはいくつかの字に注目して、行書の書き方の原理を探っていきます。今回はこの字です。

201601行書の決まり01-2

連続する三本のヨコ線」を含む漢字です。「春」「秦」など、けっこうありますよね。この部分を行書で書くときにどんな原理が働いているのかをみてみます。

201601行書の決まり01-3

右側の行書をみると、「二本目の線と三本目の線が続き書きされている」ことがわかります。

楷書を書くとき、一つの点画を書き終えるとペン先は紙を離れ、次の点画の始点に向かって空中を最短距離で移動していきます。線はつながっていませんが、書き手の意識としては、二つの点画は空中の見えない線でつながっています。このときのペン先の軌跡を「筆脈」といいます。

楷書では紙の上には現れないこの筆脈が、行書では線として書かれることがある――ここが二つの書体の大きな違いです。行書は、この写真のように、運動の軌跡(の一部)を可視化した書体、ということもできるだろうと思います。

201608光の軌跡

――ところで、一本目と二本目はつながってないよね。

そうなんです。気をつけなければいけないところです。

もう一つ、みてみます。三本線といえば、これが代表格ですね。

201601行書の決まり01-4

『楷・行・草 漢字筆順字典』(岡田崇花先生・編)より

やはり、一本目と二本目はつながらず、二本目と三本目はつなげて書かれています。

「三」の筆ペンの方のお手本をみると、一本目と二本目の間にも筆脈が通っていることがよくわかりますよね。しかし、それが実際に線として書かれることはありません。つなげて書くのはあくまで、二本目と三本目だけです。

ほかにも「秦」「春」「馬」「焦」など、連続する三本線をもつ漢字をいろいろ複数の字典でみてみたところ、みなこのルールに忠実に書かれていることがわかりました。

原理1 連続する三本のヨコ線では、二本目と三本目をつなげて書く。

めでたく、原理が一つ抽出されたようです(^^)

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さて、ここまでくると、二本線もみないわけにはいきません。

201601行書の決まり01-6

「二」では線がつながらないようです。お手本をみると筆脈の流れははっきりわかりますが、それでも線は続け書きされていません。念のため、ほかの字典も五冊ほどみてみたのですが、行書で「二」を続け書きしている字典は一つもありませんでした

但し、「宇」や「漢」など、連続する二本線を内部にもつ漢字では、その二本線は続け書きされています(字典で確認してみてください)。というわけで――、

原理2 「二」はつながないが、漢字内部の連続する二本のヨコ線はつなぐ。

こうしておきましょうか。例外がいくつも見つかるようだと困るのですが、その場合は修正します(^^)

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と、こんなふうに勉強していきたいと思っております(^^)

次回は、連続するタテ線についてみていきます。

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きょうの自運

20160809筆ペン自運「桃夭」

『詩経』

桃夭(とうよう)

桃の夭夭(ようよう)たる

灼灼(しゃくしゃく)たる其の華(はな)

之の子 于(ゆき)帰(とつ)がば

其の室家(しつか)に宜(よろ)しからん

桃の木は若々しく

あかいあかいその花

この娘は嫁入りし

幸せになる

201608桃の花と富士山

富士山は関係ないですけど(^_^)

嫁いでゆく娘を若々しい桃の木にたとえて結婚を祝っています。

『詩経』は中国最古の詩集で、3000篇ほどあったものを孔子が305歌に編纂したものと伝えられています。よみ人の名は伝わっていません。孔子はそのよみぶりの純粋さ、おだやかさを称えています。

それではまた(^^)/