古筆をまなぶ 14 高野切第三種 983 わかいほは

『書蒼』7月号のかな半紙課題(歌番号983)をよんでおきます。

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これまでこのブログで学んだ変体仮名はちょうど50字になりますが、このところ『高野切』や『粘葉本和漢朗詠集』では未習の変体仮名があまり出てこなくなりました。

201607既習変体仮名一覧

このブログで学んできた変体仮名。黄色は「変体仮名の復習」で取り上げたものです。

これまでに学んだ仮名を一覧にしてあるのですが、『高野切』『和漢朗詠集』では、「あ」「い」「う」「こ」など略化が相当に進んだ形、つまり、いま私たちが使っているのと同じ、あるいは相当に近い形しか出てこないものがあります。

すでに学んだ50字は登場頻度の高いものが多く、硬筆書写検定準1級~1級の受検対策としてはほぼ足りている感じもあるのですが、試験のためだけでなく、かな書道を学ぶ者として素養を深めていきたい――と思えば、やはりもっと変体仮名を知っておきたいところです。

というわけで、表の空欄を埋めていくために、出典にこだわらず、未習の仮名が使われている部分をいろいろな法帖から探してきて勉強する――そんなことも今後はやっていきたいと思っています(^^)

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では、今回の歌をよんでいきます。

高野切第三種983形臨

左:『高野切第三種』法帖  右:形臨(競書提出済)

新出の仮名は最初の一字「王」だけです。読みは[wa]です。

201607-1 983「王」

『かな字解』(関口研二・著)より

いつもお世話になっている『かな字解』によると、「王」は古い用例がみあたらないそうで、かな古筆の時代になって新たに加わった字母と思われる――とのことです。

上の『秋萩帖』はほとんど行書そのまま、他は草書の範囲を出ておらず、かなとしての略化はほとんど進んでいません。

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「王」以外は既習の仮名ばかりなので、一気によんでしまいます。

基泉(基撰)法師

王可本者 みやこの多徒み しか曽春无

よをうちやまと ひとはいふ奈利

わかいほは みやこのたつみ しかそすむ

よをうちやまと ひとはいふなり

201607百人一首983

はい、この歌は百人一首に収められておりますね(^^)

基撰法師は宇治山の僧で、六歌仙(紀貫之が挙げた優れた六歌人)のひとりでもありますが、詳しい経歴などは今日に伝わっていないようです。

語釈

たつみ 辰巳

201607-1 983「十二支の方角」

時刻・方角は十二支で表現されていた。「辰巳」は東南。

しかぞ  このように。「鹿ぞ住む」の掛詞説もあり。

うぢやま  宇治山 京都府宇治市の東にあり、現在は基撰山とよばれる。

世をうぢやまと 「憂し」と「宇治」の掛詞。

いふなり  この「なり」は終止形について伝聞や推定を表す。「言うそうだ/言っているようだ」

意訳

わたしの庵は都の東南で、こんなふうに(のんびり)暮らしている。

しかし人は、わたしが世間を嫌ってこの宇治山に逃れ住んでいると言っているようだ。

201607宇治山

厭世感からの隠遁生活――というとちょっとかっこよさげだけど、私はただ気楽にのんびり暮らしているだけさ(笑)、というわけです(^^)

通算で51字を学びました。

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きょうの自運

20160727ペン自運「中原中也」

硬筆書写検定の解答用紙(コピー)に書いています。

それではまた(^^)/