書道史を学ぶ 11 隷書の完成

小テスト

すべて硬筆書写検定1級・準1級で実際に出題された問題です。

次の文章で、正しいと思うものには○、誤っていると思うものにはXをつけてください。

1 平安時代男性は主に漢字漢文を用い、女性は平仮名を女手として使用したものである。(   )

2 継色紙・寸松庵色紙・升色紙はいずれも、平安中期の紀貫之筆といわれている。(   )

3 『書譜』は王羲之の書いた書論、草書の手本とされている。(   )

正解は最後に掲載します。

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実用の書体 隷書

秦という巨大な統一国家の運営のために、役人たちは膨大な書類を作成し続けなければなりませんでした。始皇帝の定めた小篆は曲線的で点画も多く、日常的に用いるには不向きだったため、小篆を直線的な構成に変え、かつ思い切って点画を省略した「実用書体」隷書が考え出されました。

201607始建国(小篆と隷書)

「始建國」 左:小篆 右:隷書(古隷)

※小篆は『角川書道字典』(伏見冲敬・編)から集字しました。

なぜ「隷」書というのか

「隷」には「下僕/下級の召使い」というような意味があります。なぜこの字が書体の名についたのでしょうか。

伝説上、隷書は秦の下級官吏(隷)である程邈(ていばく)という人物が創り出したものとされているためです。獄吏であった程邈は罪を犯して自分自身が投獄されてしまうのですが、獄中で小篆よりも楽に早く書ける書体を考案して奏上、この功により罪を許されて官吏に復帰したといわれています。

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正式な字(刻石)としては小篆、ふだんの書写には隷書――という使い分けが秦代には行われていましたが、漢代に入ると隷書は正式なものと認められるようになり、刻石の文字も小篆から隷書に変わっていきました。

古隷の傑作『萊子侯刻石(らいしこうこくせき)』

201607ライ子侯刻石『萊子侯刻石』(新代)

『萊子侯刻石』は、前漢と後漢の間の新代(紀元8~23年)に刻まれたもので、19世紀初めに山東省で発見されました。

この時代の正書としての刻石はわずかしか残っていないのですが、そのほとんどがこのような「古隷」とよばれる素朴で力強い書風で書かれて(刻まれて)います。

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素朴で力強い「古隷」に対して、このように波磔(はたく――横画の収筆部分の三角状の払い)をもつものを、「八の字」のように左右にのびるところから「八分隷(はっぷんれい)」とよびます。(漢隷とも)

201607八分隷

『隷書のレッスン 1 入門編』(田中東竹・著)より

八分隷の二大傑作 『礼器碑(れいきひ)』と『曹全碑(そうぜんひ)』

201607『礼器碑』

『礼器碑』(後漢後期)

漢代、特にその後期には隷書の完成形である八分隷の名品が数多く生まれています。中でも傑出したものの一つがこの『礼器碑』です。古来、隷書の最高の手本の一つとされています。

中国書道史上の精華

後漢の後期には石碑を建てることが流行しました。数多くの石碑が現在まで伝えられています。石碑は人目につきやすい場所に建てられるため、文や書法には細心の注意が払われており、その高い芸術性は「中国書道史上の精華」と評されています。

漢隷の最後の花 『曹全碑

201607『曹全碑』

『曹全碑』(後漢末期)

数多くの漢碑の中で「神品」と称えられている『曹全碑』は後漢末期の作で、16世紀末に現・陝西省で出土しました。長く土中に埋まっていたため、碑文はその一点一画が鮮明で美しい姿のまま残っています。

後漢末期になると、正式な隷書が徐々に崩れてきて、その後の楷書につながっていくような中間的な書体が増えていきます。その中で、隷書の伝統を完璧に受け継いでいるこの『曹全碑』は、「漢隷の最後の花」と称えられています。

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現代に生きる隷書

隷書は私たちの身のまわりでもけっこう見かけますね(^^)

201607読売新聞ロゴ

201607実践女子大学

201607二玄社

こんなのも(^^)

201607日本酒ラベル

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さて、前漢と後漢、あわせて400年の長きにわたって中国に君臨した漢王朝にも、やがて終わりが訪れます。2世紀の後半には外戚や宦官の勢力が大きくなり、皇帝の権力は衰えていきます。それにともない、各地に群雄が並び立ち、覇を競い合うようになります。そして2世紀の末には「魏・呉・蜀」の三国が分立する形勢となっていきます。

現行書体が出そろう

楷書が現れ、いま私たちが使っている楷行草の三体が出そろったのは3世紀の頃であるといわれています。三国時代(220~)は、書道史的には、楷行草の三体が次第に磨き上げられていった時代、ということができます。

お話はようやく王羲之の時代に近づいていきます(^^)

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きょうの自運

20160718ペン自運「堀口大学」

硬筆書写検定の解答用紙(コピー)に書いています。

それではまた~(^^)/

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小テスト解答

  1. (   ○  )
  2. (   X  )     『継色紙』は伝・小野道風、『升色紙』は伝・藤原行成。
  3. (   X  )  X  王羲之  →  ○ 孫過庭