古筆をまなぶ 13 高野切第三種 982 わかいほは

『書蒼』6月号のかな半紙課題をよんでおきます。

◇◇◇

201606高野切第三種983わかいほは形臨

左:『高野切第三種』法帖  右:形臨(競書提出済)

これまでこのブログで学んできた変体仮名は通算でちょうど50字になります。一緒に勉強を続けてこられた方なら、少なくとも『高野切第三種』や『粘葉本和漢朗詠集』に出てくる歌は(古文の読解はできなくとも)音読はそう困らずできるレベルに至っていると思います(^^)

今回の歌も、すべて既習の仮名ばかりですね。では、よんでいきます。

いほ みわのやまもと こひし

とふらひきませ てるかと

わかいほは みわのやまもと こひしくは

とふらひきませ すきたてるかと

わが庵は 三輪の山もと 恋しくば

とぶらひきませ 杉たてる門

語釈

いほ 庵(いおり)。粗末な家。自宅を謙遜していう。

とぶらふ 訪ねる

きませ  来+ませ(尊敬の補助動詞)「きてください」

意味

わたしの庵は三輪山の麓

恋しければ訪ねてきてください 杉の木が立っている門を

201606-1 982 三輪山と大神神社

三輪山と大神神社

奈良県桜井市三輪の大神神社は、日本最古の神社といわれています。ここには本殿がありません。三輪山そのものが神の宿る本殿である――ということなのでしょうね。

三輪山は松や杉、檜などに覆われ、山の一木一草すべてが神の宿りたもうものとして尊ばれています。中でも杉は「三輪の神杉」として神聖視され、古来より多くの歌に詠まれてきました。

大神神社は、国内屈指の強力なパワースポットとしても有名です。行ってみた~い!(ノ´▽`)ノ

◇◇◇

さて、これまで「わ」のように見える「り」について繰り返し述べてきました。「わ」のように見える字があったら、とりあえず「り」と読んでみよう――なんて言ってきたのですが、今回は珍しく、「わ」のように見える「わ」(^o^)が出てきました。

201606-1 982「わ」と「り」

左が今回の歌に出てきた「」です。右は前に勉強した歌の一部で「介(けり)」と書かれています。

これまで、形からは区別がつかないとずっと言ってきました。実際こうして比べてみると、やはりほとんど「同じ字」に見えます(^_^;

でも、これまで多くの「『わ』に見える『り』」にふれてきて、たまに本物の「わ」に出会ってみると、やはり微妙な違いはあるのかなあ……という気がしないでもありません(^_^;

「わ」と「り」はやはり形が微妙にちがう?

そこでちょっと考察です。

この二つの仮名が、草書の段階ではどう書かれているのかを、まずみてみることにします。

「わ」の字母は「和」、「り」の字母は「利」ですね。それぞれの草書の形を見比べてみます。

201606-1 草書「わ」と「り」

『新書道字典』(二玄社)より

左の4行が「和」、右の1行が「利」です。

ともに左側は禾(のぎへん)ですから同じ形になります。

問題は右側です。「わ」の方は「口」、「利」は「刂」です。これらの部品の形は、草書の段階では、かな以上に違っています。

「和」の「口」は、筆が平行ぎみに右に進んだあと、やや鋭角的に折り返してくる感じです。一方、「利」の「刂」は、ほんわかと柔らかい右まわりの曲線で描かれているのがわかると思います。

字母のこの違いを意識した上で仮名の方を見ると――、

201606-1 982「わ」と「り」

どうでしょう、仮名になっても「わ」と「り」の収筆部分には、草書時代のそれぞれの面影が微妙に残されている!――ほんとに微妙ですが、やはりそれぞれの字母のイメージが引き継がれている感じがしませんか?

私たちがいま使っている仮名では、「わ」と「り」はまったくちがった形をしています。ために微妙な違いしかない古筆の「わ」と「り」を見てその違いに気がつきにくいのでしょう。しかし、仮名を開発中だった平安びと――字母である漢字のイメージを常に強く意識していた人々――には、はっきりと別の形として意識されていた、のだろうと思います。

たとえば、ひらがなの「へ」とカタカナの「ヘ」のごくごく微妙な違いを私たちが意識できているように。

今回の歌で「わ」に珍しく出会って、ちょっと新発見の気分です(^^)

みずの古筆

■■■■■

きょうの自運

20160628ペン自運「徒然草38段」

硬筆書写検定の解答用紙(コピー)に書いています。

それではまた~(^^)/