書道史を学ぶ 9 秦の始皇帝の文字統一

小テスト

すべて硬筆書写検定1級・準1級で実際に出題された問題です。

(問題1)上段の作品の筆者を下段から選んでください。

1 雁頭聖教序   2 十七帖      3 九成宮禮泉銘

A 王羲之  B 唐太宗  C 褚遂良  D 欧陽詢

(問題2)次の文章で、正しいと思うものには○、誤っていると思うものにはXをつけてください。

1 千字文とは千字の異なった文字を集め、四言の韻文としてまとめたものである。(   )

2 『真草千字文』は随代の智永の書いたものといわれ、草書で書かれた千字文である。(   )

3 『高野切』は違う書風によって書かれ、「第一種、第二種、第三種」に分類されている。(   )

正解は最後に掲載します。

◆◆◆◆◆

前回は殷代の甲骨文と、殷周代の金文をみました。今回は、続く東周(春秋戦国)時代、そして中国最初の統一王朝である秦の時代をみていきます。

紀元前770年、周王朝は異民族の侵入を受けて都を鎬京(こうけい)から東方の洛陽に遷します。以後を東周時代とよびます。周王朝の権威がまだ保たれていた前半を、歴史書『春秋』に書かれた時代ということで、春秋時代とよんでいます。

遷都後もしばらくは周王朝の権威は保たれましたが、国力の衰えとともにそれも失墜していきます。後半の時代には諸侯(周王から与えられた封土を統治した臣下たち)のうち力のある者は「国王」を称するようになり、群雄が覇を競いあう時代になります。この時代について書かれた『戦国策』にちなんで戦国時代とよばれています。

201605戦国七雄

群雄の中で最強国としてのしあがってきたのは「(しん)」でした。

前249年、秦の荘襄王はついに東周を滅ぼします。前247年、その息子の政(せい)が秦王となり、前221年までに他国をことごとく平定し、天下を統一します。550年間にわたる長い戦乱の時代にようやく終止符が打たれました。

◇◇◇

東周時代の文字資料を一つ、みておきます。

中国最古の石刻文字  石鼓文(大篆)

201605石鼓

写真は石鼓(せっこ)と呼ばれるもので、北京の故宮博物院に所蔵されています。造られた目的ははっきりしていないそうですが、胴に刻まれた文字(石鼓文)は現存する中国最古の石刻文字として知られています。天下統一以前の秦で前374年頃に造られたものと考えられています。

201605石鼓文

石鼓文(拓本)

石鼓文は大篆(だいてん)という書体で書かれており、秦が天下統一後に制定する小篆(しょうてん)―篆書の標準体―の母体になったものといわれます。

内容は王の狩猟の様子を伝えるものが多いということです。字形は正方形に近く、大きさは一辺が4~5センチとかなり巨大化しており、広く読まれることを目的としていたことがうかがえます。

◇◇◇

諸王国を平定し天下を統一した秦王・政は、それまでの王を超越した最高の権力者として「皇帝」を称するようになります。最初の皇帝という意味で、始皇帝とよばれています。

始皇帝の文字統一

始皇帝は天下を統治するために、それまで国によってまちまちだった文字の書体を整理し、簡略化した篆書(小篆)を創りました。

201605秦の漢字統一

小篆はそれまでの文字に比べて筆画が単純で、字形は引き締まって厳格な面持ちがあります。現在でも印章の文字などに使われる篆書体の原型となりました。

201605パスポートや紙幣の篆書

パスポートや紙幣に使われている篆書体

瑯邪台刻石と泰山刻石(小篆)

始皇帝は前221年に天下を統一すると、その翌年から地方を巡幸し、自らの功績を称えるための記念碑を各地に建てさせました。これらの石碑はすでにほとんど失われ、現在は『瑯邪台刻石(ろうやだいこくせき)』と『泰山刻石(たいざんこくせき)』  の一部が残るのみとなっています。

201605瑯邪台刻石と泰山刻石

左:瑯邪台刻石    右:泰山刻石

石碑はいずれも、行政の最高責任者であった李斯(りし)の書と伝えられています。

『泰山刻石』は現・山東省にある泰山(皇帝即位の儀式が行われた霊山)に建てられたもので、一文字は縦7センチほどで本来は223字あったものが、落雷や火災などで砕け、現在は二個の残石に10字ほどしか残っていないということです。

きょうはこのへんで。それではまた(^^)/

◇◇◇

 殷はどの程度の版図を持っていたかがはっきりしておらず、続く周は封建制で、周王朝は諸侯に各地の支配を認めていました。秦は中国全土(現在の中華人民共和国の6割程度)を初めて直接的に統治した国、ということで「最初の統一王朝」といわれています。

◆◆◆◆◆

小テスト解答

(問題1) 

  1. 雁頭聖教序 ―― C 褚遂良
  2. 十七帖 ―― A 王羲之
  3. 九成宮禮泉銘 ―― D 欧陽詢

(問題2) 

  1. (   ○  )
  2. (   X    ) 正しくは「楷書と草書で書かれた千字文」
  3. (   ○  )