古筆をよむ 13 粘葉本和漢朗詠集 146 はなのいろに

五月に入って夏日(最高気温25℃以上)になることも増えてきましたね。そろそろ初夏の歌をよんでみたいと思います(^^)

前回に続き『粘葉本和漢朗詠集』から一首を選びました。未習の変体仮名は一つだけです。ただ、漢字を一部含むのと、文字の一部が消えている部分があるところが、ちょっとだけむずかしいかもしれません。

まずはよんでみてください。

201605-2粘葉本和漢朗詠集146全

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201605-2粘葉本和漢朗詠集146-1

者那のいろ めしたもとの」(はなのいろに そめしたもとの

新出の仮名はありません。問題なくよめたと思います。

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201605-2粘葉本和漢朗詠集146-2

志介」(をしけ

ここで一行目が終わり、二行目の行頭が――

201605-2粘葉本和漢朗詠集146-3

連盤」(れは

「連」[re]が新出です。かな字典をみておきます。

201605-2かな字典「連」

『かな字典』(関口研二・編)より

[re]は古く真仮名の時代から「禮/礼」が最も多く使われました。「連」「麗」がそれに離れて続きます。「連」も真仮名に用例があり、その後も続いて使われている伝統的な仮名です。略化による変化は少なく、「草」といえます。(『かな字解』[関口研二・著]による)

「真仮名」「草」などの用語についてはこちらで述べています。

志介」「連盤」(をしけれは

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201605-2粘葉本和漢朗詠集146-4

ころもへう」(ころもかへう

「へ」は単独ではゆったりした曲線がわずかに右に下がって終わりますが、連綿で下の字につながる場合、そのあと左下に向かうことで結果として「つ」と非常に紛らわしい形になることがあります。形だけで判別しにくい場合は、どちらで読めば言葉として成り立ちそうか、考えることになります。ここでは「ころもか…」ときているので、「へ」(ころもかへ)だろうな、と(^^)

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201605-2粘葉本和漢朗詠集146-5

今日もある可奈」(今日にもあるかな

「今日」は漢字です。次の字は一部が消えていて読みにくいのですが、上下をつないでみると――

201605-2粘葉本和漢朗詠集146「尓」

201605-2かな字典「尓」

「尓」[ni]であることがわかります。

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全体を再掲して、よんでいきます。

201605-2粘葉本和漢朗詠集146全

者那のいろ めしたもとの 志介連盤

ころもへう支 今日もある可奈

はなのいろに そめしたもとの をしけれは

ころもかへうき 今日にもあるかな

花の色に 染めしたもとの 惜しければ

衣更(ころもが)へ憂き 今日にもあるかな

語釈

ころもがへ 旧暦四月一日、夏の初めの行事で、持統天皇の頃(在位690-697)に始まったといわれています。衣装だけでなく、調土類もいっせいに夏向きのものに改められたとか。

意味

たもとを桜の色に染めた衣を脱ぐのが惜しいので

衣替えするのも気の進まない今日であることだ

201605-2葵祭

「今日であることだ」なんて書くと硬いですが、要するに「気が進まないわぁ」ということです(^^)

冬には春よ早く来いと願い、初夏には去りゆく春を惜しむ――平安びとは本当に春が好きなのですね。冬の寒さも夏の暑さも厳しいので、春を愛する気持ちはとてもよくわかります。そして、春への愛は桜への愛でもあります。その心は、現代の私たちにもしっかり受け継がれていますね。

新出の仮名は「連」の一字。通算50字を学びました。

週末、楽しくお過ごしください。それではまた(^^)/