書道史を学ぶ 5 書聖 王羲之(3) 楽毅論

小テスト

すべて実際に硬筆書写検定1級・準1級で出題された問題です。今回から、このブログの常連さんなら答えられそうな問題は含めていくことにします。――ので、「復習テスト」でなく「小テスト」ということに(^^)

(問題1)上段の作品の時代を下段から選んでください。

1 孔子廟堂碑   2 興福寺断碑  3  高野切

A 奈良時代  B 平安時代  C 唐時代  D 六朝時代

(問題2)次の文章で、正しいと思うものには○、誤っていると思うものにはXをつけてください。

1 『興福寺断碑』は王羲之の書として伝えられているが、王羲之の書を集字したものである。(   )

2 五つの書体の総称を「五体」といい、篆・隷・楷・行・仮名をいう。(   )

3 『寸松庵色紙』は、平安時代を代表する名筆であり、『継色紙』、『升色紙』とともに「三色紙」の一つといわれる。(   )

正解は最後に掲載します。

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きょうは王羲之の楷書作品をみます。

王羲之の書跡には行草書の尺牘(せきとく―手紙)が圧倒的に多いのですが、少数ながら楷書の作品も残されています。それらはすべて字粒の小さな楷書で「小楷」(しょうかい)とよばれています。

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黄庭経』(こうていきょう)

201605『黄庭経』

1センチ四方ほどの小さな字で書かれています。養生法を説いた道教の経本で、王羲之が道士に書き与えたものといわれています。

王羲之の筆であることを疑う意見もあるようですが、おおむね信じられています。どのていど王羲之の書の実相を伝えているか判断がむずかしいところもあるものの、王羲之の小楷の名品として古くから重視されてきました。

(小楷作品は文字が小さいため筆写によって細部の表現が相当に変わってしまっている疑いが強い――という意見もあります。)

明代末期の文人で董其昌(とうきしょう)という人は、この作品を「瀟灑古淡」(すっきりと無駄がなく枯れた淡白さがある)と評しております。その筆致には、奥深い味わいが感じられます。

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楽毅論』(がっきろん)

201605『楽毅論』

「楽毅」(がっき)というのは戦国時代の将軍の名です。三国時代、魏の夏候玄(かこう・げん)は、楽毅が敵を攻めて七十もの城を落としながら二つだけ落とせなかったのを世間が非難していることに対し、彼を弁護する文章『楽毅論』を書きました。

王羲之の『楽毅論』は、楷書体の完成度、用筆の妙味の点で一つの最高段階に達したものと評されています。

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光明皇后の『楽毅論』

201605正倉院

東大寺正倉院

光明皇后(701-760)の臨書せられた『楽毅論』が、正倉院に伝わっています。

201605『楽毅論』光明皇后臨

仏教による国家鎮護を願い、東大寺・大仏を建立せられた第45代聖武天皇の皇后であります。聖武天皇とともに奈良時代の能書家としても有名です。

201605光明皇后

光明皇后は仏教に帰依し、貧しい人々のための医療施設(施薬院)や、孤児や困窮者のための救済施設(悲田院)を運営するなど、人々の救済に力を尽くされました。皇后みずから病人の世話をされることもあったと伝えられています。

数え44歳での臨書『楽毅論』は、王羲之の筆遣いの特徴をよくつかみ、「臨書の最高峰」と評されていますが、ヨコ線は細くタテ線はどっしり太いという王羲之書法が強調されており、力強く、気迫に満ちた印象となっています。

光明皇后はその筆跡から「男まさりでいちど決めたことは熱心にやりぬく情熱的な女性」だったのではないかと分析されているようです。『楽毅論』臨書の力強さをみるとさもありなんという気もします(^^)

書道史上の最重要人物・王羲之について、もう少し続きます。次回は草書の作品をみます。

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小テスト解答

(問題1) 

  1. 孔子廟堂碑 ―― C 唐時代
  2. 興福寺断碑 ―― D 六朝時代 (
  3. 高野切 ―― B 平安時代

過去問では書作品の筆者名を答えさせる問題が圧倒的に多く、このように時代を答えさせる問題はこのところ出ていないようですが、書作品の文化的・芸術的価値を理解するためにはやはり時代の流れも意識しないわけにはいかず、自然に覚えることになると思います。

※ 六朝(りくちょう)時代とは

文化史としての時代区分で、3世紀初めから(隋が中国を再び統一する)6世紀末までをこうよびます。六朝とは現在の南京を首都とした呉・東晋・宋・斉・梁・陳の六王朝をさします。六朝では漢代以来の文化風習が温存され、江南の温和な気候風土を背景に、優雅で華麗な貴族文化が花開きました。これを六朝文化とよびます。

(問題2) 

  1. ( ○ )
  2. ( X  )     X 仮名 →  ○ 草
  3. ( ○ )

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それではまた(^^)/