古筆をまなぶ 10 高野切第三種 978 きみかおもひ(1)詞書

『書蒼』3月号のかな半紙課題は歌番号978でした。よむ勉強もしておきたいと思います。

978には、ちょっと長い詞書(ことばがき)があります。この部分は『書蒼』の課題にはなっていませんが、ここではいつものように詞書から学びます。

高野切第三種978きみかおもひ全体

最初の6行が詞書(その歌がよまれた事情や背景などについて述べた文)で、このように行を下げて歌の前に書かれます。

◇◇◇

詞書もいちおう臨書しましたが――、

高野切第三種978きみかおもひ詞書左:『高野切第三種』法帖 右:形臨

ろくな出来ではありません。よむ勉強にさっさと進みます(^_^;

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-1

「むねを)よりかこしよ

(むねをかのお()よりかこしより)

七字目が新出です。字母は「本」、読みは[ho]になります。

「保」に次いでよく出てくるのがこの「本」のようです。

字典をみておきます。

201603『関口かな字典』「本」

『かな字典』(関口研二・編)

(画像クリックで大きく表示されます)

この仮名にはいくつかのバリエーションがあるようですね。整理してみると――

201603「本」かな3系統

こんなふうに三系統くらいに分かれるようです。

同じ字母なのに、どうしてこんなに形が違ってしまうのでしょうか。

書道字典でもとの漢字の姿をみてみました。

201603漢字「本」3系統と仮名3系統

上:『角川書道字典』より  下:『かな字典』(関口研二・編)より

もとの漢字にこれだけ違った字体があります。それぞれの字体から、それぞれ仮名が生まれているわけですね。

左の『集王聖教序』の行書と、右の『懐素千字文』の草書、この二つに類する字体は、書道やペン字をやれば何度も出会うだろうと思いますが……、

真ん中の子(笑)は、私はあまり見かけてこなかったと思います。この機会に覚えておきたいと思います。

ところで真ん中の「本」の筆順ですが――、

201603-2高野切第三種978「本」筆順

先にタテ線が書かれているように見えます。念のため字典で確認しておきます。

201603岡田先生字典「本」

うーむ。愛用の『楷・行・草-漢字筆順字典』(岡田崇花先生・編)には残念ながらこの形の草書は載っていませんでした。

こういうときは――、

201306江守先生字典

『楷行草 筆順・字体字典』(江守賢治・編)

岡田先生の三体字典が出るまで、行草書の筆順を調べたいときはいつもこの字典のお世話になっていました。2900字ほどの漢字についてペン字で筆順が収録されています。旧字体の筆順も調べることができます。また、2600字余りの毛筆三体も載っています。

この字典ならきっと――、

201306江守先生字典「本」草書筆順

ありました。確認おわり(^^)

「本」の一字でずいぶん時間がかかっちゃったな(^_^;

詞書の先ほどの部分を再掲して、読みを示します。

201603-2高野切第三種978-1

「むねを於本よりかこしより」

(むねをかのおほよりかこしより)

――読めたけど、意味がちっとも浮かんでこないなあ。

はい、ここは固有名詞の説明が必要なところです。

「むねをかのおほよりは人名です。宗岳大頼。9世紀後半~10世紀初め頃の人で、「算博士(さんはかせ)」だったと伝えられています。中央の官吏養成機関である「大学寮」の算術教授をこう呼んだそうです。

「こし」は地名「越」で北陸。のちに越前・越中・越後・能登・加賀と分けて呼ばれるようになる地域です。

つまり「宗岳大頼が越より」

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-2

「まうてきりけるとに」

(まうてきたりけるときに)

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-3

可多りなとしはへりるに」

(ものかたりなとしはへりけるに)

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-4

「ゆのふけるをみ

(ゆきのふりけるをみて)

お、「本」の後は知ってる仮名ばかり続きますねえ!これならどんどん……

201603二郎さん

突然どうしたんですか二郎さん(^_^;

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-5

ひ」

(おのかおもひ)

すっかりおなじみになりました「お无ひ」です(^^)

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-6

「このこと奈无つもれると」

(このゆきのことなむつもれると)

◇◇◇

201603-2高野切第三種978-7

「いひけるをによめる」

(いひけるをりによめる)

結局、「本」のあと未習の仮名はひとつも出てきませんでした。

◇◇◇

詞書全文を再掲します。古筆がすらすら読めてしまう快感を味わってください(^^)

高野切第三種978きみかおもひ詞書2

むねを於本よりかこしよ
まうてきりけると
可多りなとしはへりるに
のふけるをみ

のこと奈无つもれると
いひけるをによめる

むねをかのおほよりかこしより
まうてきたりけるときに
ものかたりなどしはへりけるに
ゆきのふりけるをみて
おのかおもひ

このゆきのことなむつもれると

いひけるをりによめる

宗岳大頼が越より

もうで来たりけるときに

物語などしはべりけるに

雪のふりけるを見て

おのが思い

この雪のことなむつもれると

言いける折りによめる

語釈

 まうて来たりける  「まうづ」は「地方から上京する」

物語  話・話すこと・おしゃべり  「読み物」の意味もあります。

~しはへり  「はべる」は本来は「(皇族や貴人に)お仕えする」「そばにひかえる」ですが、補助動詞として用いられると丁寧なニュアンスが加わります。「~しております」

この雪のことなむつもれる  「こと」は正しくは「ことく(ごとく)」で、「く」を書き落としたもののようです。古今和歌集の解説書をいくつかみたところ、すべて「ごとく」となっています。

なむ(係助詞)は強調ですが、現代語訳ではそのニュアンスが出しにくいです。強調の係助詞の仲間に「ぞ」「こそ」がありますが、現代人が

きょう彼女に告白する!╭( ・ㅂ・)و

きょうこそ彼女に告白する! ╭( ・ᄇ•́ )و!!✧

「こそ」の方に告白する決意の強さを感じる――ように、平安びとは「なむ」に強めのニュアンスを受け取ったのでしょう。

( ̄ー ̄)ゞ 顔文字こそニュアンスの差をよく表してる気がする(笑)

意味

宗岳大頼が越から

上京してきたときに

お話などしておりましたところ

雪の降ったのを見て

自分の(貴女への)想いは

この雪のように(深く)つもっていると

言った折りによんだ(歌)

201603深い雪

大頼さん、どなたか女性に想いを告白なさったようです。貴女への想いはこの雪のように深い――って、(ノ∀\*)ひゃ~、こんなセリフ……、

201603僕は言えましぇん

101回もプロポーズする押しの強さがあれば大丈夫!(^_^)v

201603二郎さん「いえます」

二郎さん、言えるのね。すてきだわぁ~(∩∀`*)   ←誰?

( ̄ー ̄)ゞ きょうはブログのテンションが変だな。春のせいかな(笑)

そして、この告白に対する相手の女性の答えが今回の歌なのでした。さて、女性はどんな歌をかえしてくるのでしょうか。

明日に続きます。

《今回の新出仮名》   通算36字を学びました。


■■■ 草書学習記録 3/22(火) ■■■

九日目です。

昨晩はちょっと調子が悪くて、「有」「其」などの収筆をまちがえていたので30字テストを3回やりました。3回目でようやく直りました。

20160322草書学習1

20160322草書学習2

 者  郎  良  郁  有  部

 肖  期  其  邪  牙  都

 口  賑  貝  娠  女  辰

 張  弓  長  辱  寸  唇

 純  糸  屯  套  帳  巾

20160322草書学習3

そのあと「金・鈍・能・罷・熊・才」の6字を学習。

稽古時間20分。通算54字。


それではまた~!! ヾ(*^。^*)ノ  ←やっぱり変