硬筆書写検定1級の受験対策の一環として、古筆をよむ勉強を続けています。
今回は、先日出光美術館で出逢った高野切第一種の例の一首、古今和歌集48をよんでみたいと思います。今回は2回に分けて書いていきます。
では、はじまりはじまり~(^^)/
◇◇◇
早速よんでいきます。
墨をたっぷりつけての書き出しです。このあとも、どこで墨継ぎしているかがわかりやすい書きぶりになっています。
「ちりぬと(?)」
未習の変体仮名は1つ、ですが、その前に……、
――最初の字は「ち」?それとも「ら」?
先日、硬筆書写検定を一緒に受けにいった友人がこれをみて言いました。
うーむ。私は最初から「ち」にしか見えなかったのですが、古筆にふれるのが初めてという人だと、このあたりでもひっかかってしまうことがあるのかもしれません。
これは、一画目のヨコ線と次のタテ線の位置関係を見れば、「ら」である可能性はなさそうです。かな字典でみてみます。
『携帯かな字典』より
字母は「良」ですから、一画目の線が二画目の線と交差するような書き方をされたものは当然ながらありません。
次に「ち」をみてみると――、
字母「知」には線の交差があり、仮名にもそれが反映されています。
以前にもこんな例がありました。
左:支(ki) 右:よ
これも、字母の形がぞれぞれの仮名の形にしっかり反映しています。「支」は上部に線の交差があります。「よ」は、字母が「与」なので交差がありません。字母を意識すれば、違いは明らかです。
読みの候補が複数あってどちらで読むべきか悩ましい場合は、字母の形を思い出すと正解に近づける場合が多いと思います。
最初の字でいきなり長くなってしまいました。初句を再掲します。
二文字目は、これまで何度も出てきた「わ」のように見える「り」です。古筆に頻出しますね。
三文字目は見たままで「ぬ」。
四文字目は指で線を追ってみると、「と」だろうなあ、となります。
さて、問題は五字目ですね。現代人なら無条件で「ん」とよむ形です。そのとおりで、「无」から生まれた、現代の「ん」と同じ形です。
平安時代には二つの読み方がありました。
以前に述べたように[mu]と[mo]です。
――え?今の「ん」と同じ読み方はなかったの?
当然のように出てくる疑問ですが、古筆に出てくる「ん」は[mu]か[mo]で読むと、まずは覚えておくことにします。
[mu]または[mo]と読まれた「ん」がいかにして今の発音で読まれるようになったか――これはちょっとめんどくさ~い(^_^; お話になるので、別の機会に整理してみようと思います。
古筆にこの形が出てきたら[mu]か[mo]で読む――として、ここではどちらでしょうね。
こういうときは、言葉として成立しそうな方を選ぶことになります。「ちりぬと…む」では日本語として言葉になりそうにないから、「ちりぬと…も」だろうなあ――と当たりをつけて、次の句にすすむことにします。
「ちりぬと无」(ちりぬとも)
◇◇◇
「かを多にのこ(?)」
最後の字は、「勢」を字母とする[se]です。
『携帯かな字典』より
「かを多にのこ勢」(かをたにのこせ)
◇◇◇
「者(?)のはな」
「者」[ha]は既習。二文字目は「流」を字母とする[ru]です。
「者流のはな」(はるのはな)
五七五、までよみました。
「ちりぬと无 かを多にのこ勢 者流のはな」
(ちりぬとも かをたにのこせ はるのはな)
明日に続きます。それではまた(^^)/