硬筆書写検定1級の受験対策として、古筆を読む勉強を続けています。
問題は、このような体裁で出されます。
『硬筆書写検定1・2級合格のポイント』(平成22年版)』より
上の問題では――、
乎美なへしみる尓こゝろは那くさ
まていとゝむ可しのあ支所恋しき 清慎公
これだけの変体仮名が読め、次のように解答できれば正解になります。
をみなへしみるにこゝ(こ)ろはなく(ぐ)さ
まて(で)いとゝ(ど)むかしのあきそ(ぞ)恋しき 清慎公
このブログでやっているような内容の理解までは求められません。
あとは問題の難度ですが、これは『合格のポイント』に――
『粘葉本和漢朗詠集』が基本古筆
(でっちょうぼんわかんろうえいしゅう)
――であると、学習の指針がはっきり示されています。
古筆臨書で『高野切第三種』を学んでいくので読みの勉強も一緒にやっているわけですが、変体仮名の使用が少なめな『第三種』だけでは受験対策としては不十分なようです。
ということで、『粘葉本和漢朗詠集』その他で読みの勉強をしていきます。「古筆をまなぶ」とともに、こちらもよろしければおつきあいください。
――ブログタイトル中の歌番号は『日本名筆選 粘葉本和漢朗詠集(上下)』(二玄社)に拠りました。また、「古筆をまなぶ」の方は『高野切第三種』の臨書にあわせて読みをすべてやっていく予定ですが、こちらは分量がはるかに多いので、ブログ上ではランダムにご紹介していく形にさせていただきます。
では、はじまりはじまり~(^^)/
◇◇◇
「よむ」編の第1回として、やさしめのものを選びました。変体仮名は一字を除き、すべて「古筆をまなぶ」で既習のものです。未習の一字も、『書蒼』のかな半紙課題でいちど出ています。
まずは通してよんでみてくださいね。
◇◇◇
――では、よんでいきます。
「者る多つと」(はるたつと)
「いふは可り尓や」(いふばかりにや)
「みよしのゝ」
「や(?)も可須みて」
未習の一字が出てきましたが、字母が「万」だということはすぐわかったのではないかと思います。読みは「ma」です。(ちなみに「萬」を字母とする変体仮名もあります。)
「やまもかすみて」
「けふ者みゆらむ」(けふはみゆらむ)
「忠岑」
◇◇◇
通読してみます。
者る多つといふは可りにやみよしのゝ
や万もかすみてけふはみゆらむ 忠岑
↓
はるたつといふはかりにやみよしのゝ
やまもかすみてけふはみゆらむ 忠岑
受験対策としてはここまでの勉強で十分かもしれませんが、やっぱり内容もみておきたいですよね(^^)
↓
春立つと いふばかりにや み吉野の
山もかすみて 今日は見ゆらむ
(語釈)
み吉野 吉野(今の奈良県の吉野山周辺)の美称
みゆらむ 見える(見えている)だろうか
助動詞「らむ」は、自分が体験していない事柄について推量する、というのが基本用法です。
(意味)
立春になったというだけでみ吉野の
山もかすんで今日は見えているだろうか 忠岑
「霞立つ」といえば俳句では春の季語であります。霞が立てば春の到来を実感することになります――が、「見ゆらむ」ですから作者は吉野山を実際に見て詠んでいるのではありませんし、霞などまだ立つわけもないことも百も承知です。
こういう「暦の上では春なのだから、実際に春になってほしいなあ→いや現実にはまだだということはわかっているけど→春よ早く来ておくれ」――と祈るように詠まれる歌はとても多い気がします(^^)
「忠岑」さんとは、あの壬生忠岑(みぶのただみね)です。平安時代前期の歌人で古今和歌集の撰者のひとり。百人一首のこの歌で有名ですね。
『百人一首』関連ではおすすめの本です(^_^)
冬至の翌日に早くも立春の歌をよんでみました(^_^;
お疲れ様でした。それではまた(^^)/